公益財団法人 電通育英会

リーダー育英会塾

OB・OG事例紹介情報発信・助成事業

事例紹介一覧へ

第1回

1期生 竹山優子さん
筑紫女学園大学 大学総務部 企画主幹(2021年2月現在)

OB・OG事例紹介メインビジュアル

2018年に始まったリーダー育英塾。今回から卒業生に当時を振り返ってリーダー育英塾に対する想い、その場で得た学び、そして今のご自身の実践についてインタビューをしていきます。第1回となる今回は、1期生の竹山優子さんにお話を伺いました。

画像1 画像2

筑紫女学園大学福岡県太宰府市に位置する女子大学。3学部(文学部・人間科学部・現代社会学部)に約2,800名の学生が学ぶ(令和2年5月現在)。母体となる学校法人筑紫女学園は1907(明治40)年に創立。「親鸞聖人によって明らかにされた仏陀(釈尊)の教え、すなわち浄土真宗の教えに基づく人間教育」を建学の精神とし、大学のほかに幼稚園・中学・高校・大学院を擁する。

竹山さんにとって、リーダー育英塾とは?

竹山優子さん

竹山 優子さん筑紫女学園大学
大学総務部 企画主幹
(2021年2月現在)

「これ以上ない贅沢な学びの場」です。企画・運営はもちろんのこと、講師、ファシリテーター、スタッフ、一緒に学ぶ仲間すべてが憧れと刺激の存在であり、夢のような場でした。何より、全国各地で活躍する高校・大学の教職員の方々と3日間を過ごせたということが、離れていても鼓舞し合える仲間がいるという精神的な「柱」を私の中に築いてくれました。OB・OGと再会すると、育英塾で学んで本当に良かったと実感します。

リーダー育英塾に参加したきっかけは?

リーダー育英塾の前身となる2008年から2017年に開催されていた大学生研究フォーラム(→アーカイブはこちら)には、高大接続、大社接続の観点から学生のキャリアを考えていくことに関心を抱き、参加していました。その後、フォーラムが形を変えて発展し、溝上先生・中原先生が「リーダー」「塾」という新たなテーマを掲げて監修するという話を聞き、「参加するしかない」と思って応募を決めました。

応募当時の竹山さんのポジションと自身の課題は?

大学職員として、学内では比較的新しい部署であった学習支援センター(当時名称)で、同法人の高校1年生向け高大連携プログラムの担当をしていました。キャリア教育として高大連携プログラムを推進し始めて3年目を迎えており、より良い構想を目指して、全国から集まる先生方と自分の考えを共有し、評価してもらうことで、洗練させたいと考えていました。 具体的には、高校から大学へのトランジションを考えて、教育課程を串刺しにしたキャリア教育プログラムにしたいと思っていましたが、私自身が高校の現場にいるわけでもなく、大学でも授業を担当していない立場で、プログラムとして形にすることに苦しんでいました。この課題をリーダー育英塾への応募課題としてまとめる中で、プログラムを推進していくに当たっての現実的な課題と、「こういうことができたらいいな」という夢を整理していくことは、結局自分は何をしたいのかということを突きつけられる、これまでにない機会でした。育英塾で、思い切って講師の先生や参加者の力を借りてみようと準備をしていきました。

※第1回リーダー育英塾では、応募の際に「トランジションの視点を加味した自校の課題と解決策について」を500字程度でまとめるという選考課題が出された。

リーダー育英塾の思い出を教えてください

選考課題、当日までの準備、育英塾の3日間は本当にハードで、集中の連続でした。合宿の前夜から現地入りし、選考課題をまとめたスライドを見ながら翌日の発表に備えて練習をして臨みましたが、いざ始まってみると、あっという間の3日間でした。

まず印象に残っているのは、合宿中は5~6人で構成されるグループで行動し、ファシリテーターの先生も含め、ずっと一緒にいられたという楽しさです。初対面の仲間たちとグループワークの時間だけではなく、食事の時間も含めてほぼグループで共に行動をするというのは、学生時代に戻ったようで非常に新鮮でした。
次に印象的だったのは、仲間たちの行動力、リーダーシップに度肝を抜かれたことです。一つひとつの発言や日ごろ実施している教育とその背景、目標とするテーマなど、そのどれもが太刀打ちできないほど高度で、かつ温かく、教育という神聖さを改めて知ることになりました。
そして、「合宿では時間をかけて自分の課題を深めていけるだろう」、「詰め込んできた思いを削ぎ落としていけばいいだろう」と思っていましたが、それが甘い考えだったことを痛感させられました。グループの仲間やファシリテーターと議論をする中で、普段職場では決して指摘を受けることがない痛いところを次々と「何をしたいのか分からない」と質問され続けました。そのおかげで「自分がやりたかったこと」の整理と、「解決に向けてどうするか」という迷いを経て、実践に向けて徐々にやるべきことを見出すことができました。
リーダー育英塾の最後には、仲間からの率直な指摘を行動に移すことを、合宿後の「ファースト・ステップ」を参加者の前で宣言しました。私の場合は、他者を巻き込むリーダーシップができていないという、プログラム運営の根本に課題を自覚したので、「戻った翌日に高校の先生に電話をする」と定めて、福岡に戻ってすぐ、運営の基本と詳細について、高校の現場とプログラム運営の仕上げに取り掛かりました。
このような気づきを得られたのは、何より3日間を通してバランスの良いプログラムが準備されていたことに尽きると思います。育英塾スタッフの運営、講師陣にもこれ以上なく恵まれました。実践と結びつく講義で頭を冷やし、先進事例の紹介や豊富なワークなどで気持ちを高ぶらせ、日ごろのシンポジウムや学会では見られない講師やファシリテーターの先生方のオフの姿に気持ちが和み、「私だけの贅沢感」をさらに押し上げてくれたことは大きな思い出です。

リーダー育英塾での経験は実践にどう活きていますか

リーダー育英塾に参加する前後で多くの部署異動を経験しましたが、部署が変わってもやりたいことは変わりません。「キャリア教育」というキーワードで生徒や学生にあらゆる形で携わっていくという、自分がやりたいと思ってきたことと育英塾の目的がマッチし、自分の想いを確信に変えてくれた場だったと思います。

育英塾から戻り、実践へとつなげた高大連携プログラムで生徒450名の笑顔を見送った後、部署を異動し、現在は教職員のSD(スタッフ・ディベロップメント)やFD(ファカルティ・ディベロップメント)の担当、さらにコロナ禍の影響もあり、教学支援の現場における業務の手伝いという新たな役割も巡ってきました。管理職として、大学職員同士が業務の目的と記録のアーカイブ、課題を継承しやすくするためのテンプレートの推進や職員への研修体系づくりは、業務をスムーズに行うために形式化していく初歩的なものではありますが、職員のキャリア形成を支援するマネジメントの第一歩と考えています。また、学生一人ひとりに対する入学から卒業までのアドバイジングの在り方をシステムにどう導入するかなど、教学支援の現場で取り組んでいることも、リーダー育英塾での「継続するキャリア支援」の想いを具現化する機会として活きています。

いずれは、学生のキャリアに直接関わる部署にとどまらず、学生や保護者と関わる部署、すべての部署を含めて、学生たちの現在の学びが将来どのようにつながるのかという視点で、学生を支援できる力を身につけてもらえるSDを構築したいと考えています。

読者の皆さんへメッセージをお願いします

「課題を解決したいと思うのなら、課題に携わる人たちと実際に会せよ」というのがリーダー育英塾で学んだことです。育英塾に参加するまで、大学の教職員ばかりが集まる研修に出ては、「高大接続」や「キャリア教育」について知ったつもりになっていました。しかし対象の学生は、高校から学んできて大学に入り、これから社会に出ていく人材です。本当に考えを共有したければ生徒、学生、社会人といったさまざまな場で支援を行う方々と同時に集まり、他の方々が感じている日ごろの課題や行動目標、その理由や動機について見聞きする必要があります。リーダー育英塾に参加したことで、高大社の現場に立つ人々が一堂に会することこそが課題解決の糧になるという、単純で重要なことに気づきました。 「勉強したければ研修会で、実践まで繋げたければ“リーダー育英塾”で」。 今後も、夢のような3日間を過ごし、実践する仲間が後に続いていくことを願っています。

溝口侑

聞き手:溝口侑リーダー育英塾 運営統括
京都大学大学院教育学研究科 博士後期課程在籍(2021年2月1日現在)

事例紹介一覧へ