IKUEI NEWS vol.84
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多様性の受け入れを阻む“心の障壁”を破るために多様な人々が協力し合うことが欠かせなくなってきた現代。人々はどうすればお互いに個性を尊重し合い、お互いを活かし高め合えるのだろうか そもそも、私たちが「日本人」と言うとき、その「日本人」とは誰のことであろうか。アイヌの人々、沖縄の人々、日本国籍ではない在日の人々はどうであろうか。海外に住む日本国籍の人々、日系二世・三世、二重国籍の人々はどうであろうか。「欧米人」に至っては、一体誰を指しているのであろうか。 メディアや教育は、極めて安易にカテゴリー(集団)に言及し、それにラベル(レッテル)を貼りたがる。「バブル世代」「ゆとり世代」「キャリア・ウーマン」「専業主婦」「草食男子」「オタク」「昭和の人々」――。あたかもそれぞれのカテゴリーの境界が区切れ、そのカテゴリーに属するとされる人々全員が何らかの心理的特性を共有しているかのごとくにラベルを張り、ステレオタイプを作り上げる。それらに晒され続けてきた私たちはそれらを信じ込まされ、あるいは面白いと思い、それらを再生産(今どきの言葉では「リツイート」)し、拡散・誇張し、やがてそれらはステレオタイプとして定着する。前段で述べたようにステレオタイプが事実を反映していないとすれば、火のないところにたてられた煙が、私たちの日常に蔓延しているのかもしれない。 ここまでステレオタイプを批判すると、読者からは「私はそんなステレオタイプは持っていない。他の人は持っているかもしれないが」という答えが返ってくるかもしれない。「他の人(第三者)は悪いけれども、自分は良い」という一般的な信念は、心理学では「第三者効果」とも呼ばれている。実は、その他の人も「自分は持っていない。(あなたを含む)他の人は持っているかもしれないが」と思っているのである。つまり、「他の人が持っているかもしれない」とあなたが思っているものは、「あなた自身も持っているかもしれない」のである。 とかく自分のことだけは、見えないものだ。ステレオタイプに限らず、判断や思考のバイアス(偏り)の盲点は、まさに自分自身なのだ。「人のふり見て我がふり直せ」とはよく言ったものである。ちなみに心理学では、自分で認識できない、自分の中のステレオタイプを自覚させてくれるテストも開発され、Webで公開されている(「IATテスト」で検索)。 さらに、「仮に私がそんなステレオタイプを持っていたとしても、私はそんなステレオタイプで人を判断しない」という答えも返ってくる。人を判断するときに意識的に自分の中のステレオタイプを抑制しようと努力するのである。 しかし、この努力には落とし穴がある。ダイエットをしているときに、食べ物のことを考えまいと努力すればするほど、ふっと生クリームたっぷりのケーキが頭に浮かぶ。別れた恋人のことを考えまいとすればするほど、ふっとその笑顔が思い浮かび悲しくなる。このような現象は、思考抑制による「リバウンド効果」と呼ばれている。ステレオタイプで人を判断すまいと努力すればするほど、その意識的努力が続いているうちは良いが、努力が途切れた瞬間、以前よりも強くステレオタイプに基づいて人を判断するようになってしまうのである。 残念ながら、リバウンド効果の研究はまだ発展途上だ。ここ数年、私たちの研究グループでは、どのような条件が整えばこの落とし穴を避けることができるかを明らかにするため、心理学実験を積み重ねている。蔓延する「カテゴリー分け」や「ラベル貼り」に警戒をバイアスの盲点を自覚しようステレオタイプ抑制の「落とし穴」に注意イノベーションで進化する社会を学ぶ ❸ 「変化の波」をしなやかに乗り切る特集IKUEI NEWS 2018.10 vol.84 14
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