IKUEI NEWS_69
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 この転換に、反転授業が役立ったというエピソードがあります。本学では休講にした講義の補講を行う際、18時15分からのコマで行います。時間の関係もあり、例年の出席者は大体3〜4名ですが、私が昨年6月に実施した反転授業のクラスの補講には、30数名のクラス全員が出席しました。不思議に思った私が出席した理由を学生たちに聞くと、「授業に出ないと、受講のための準備学習が無駄になりもったいない」と答えたのです。 反転授業の効果に関する客観的なデータはまだ採っていませんが、この答えこそ、学生がエンゲージメントしている証だと確信しました。「?」で終わる授業を目指して これから大学がアクティブラーニングをより積極的に実施していくために重要なのが、予習・復習の扱いです。 アクティブラーニング型の授業を受けるにあたっては、図書館等での予習・復習が必須です。ところが、授業の評価はテストの成績が全てなので、授業外学習は評価の対象外になります。予習・復習は試験の一発勝負に向けた学習とは異なり、レベルに合わせて自分のペースで学べるという大きな長所を持っています。これを成績 SCOTの派遣を要請して助言を受けた先生のほとんどは、「目からウロコ」だと言っています。今まで見えていなかった授業の課題を認識し、「何を変えればより学生に分かりやすくなるか」が的確に分かるからです。ただ、残念なことに、授業をコンサルティングして欲しいと手を上げる先生は決して多くありません。せっかくの予習が「もったいない」 アクティブラーニングは、授業に出ること自体がチャレンジングで、自分を変えるチャンスでもあります。高校と大学の違いは、高校では答えを「探して」勉強しますが、大学では自分で主張できる答えを「作る」のです。しかし、先生が学生のために一所懸命アクティブラーニングに取り組んでも、楽勝科目だけを選択して卒業する学生がいることも事実です。この矛盾の解消には、一学年の履修単位数を制限するキャップ制の導入、および厳格な単位認定を行う授業の実施が必要です。 また、多くの学生は、「高校から大学へ」、「生徒から学生へ」という学びの転換ができていません。入試を経験することが学びの転換だと錯覚しているのかもしれません。に反映させるシステムがあれば、学生の授業外学習が増えるはずです。 また、予習で培った自分なりの考えを、先生や周りの学生のそれと授業中に比較して再検討することは、批判的思考力を育むことにも繋がります。是非とも学生の皆さんは、予習の意味・重要性を再認識してみてください。 アクティブラーニング型授業の到達点は、色々な意見を集約して方向性を示すことです。例えば反転授業の事前学習は難しいものではなく、授業の予告編だと私は考えています。面白いところだけ見せて、学生に考えさせるきっかけを作ることが重要です。私はいつも学生に、「良い論文はピリオドで終わらない」と言っています。研究でも議論でも大事なことは、「クエスチョンマークで終わる」ことです。それが学生のうちは1つでも、研究者なら3つ、あるいはノーベル賞受賞者ならもっと多いかもしれない。「?」を増やせば、学生の可能性を伸ばすことができます。 そして何より、授業は教員と学生がともに創るという考えが重要です。そのためには、学生が積極的に関わるアクティブラーニング型授業が不可欠です。学生の無限の可能性を引き出すのが大学の役割なのです。※反転授業:あらかじめ説明型の講義をオンラインで視聴し、応用課題を対面学習で学ぶ授業形態。1980年、コロンビア大学大学院比較・国際教育学専攻にて教育学博士号取得。1990年、東京大学大学院で教育学博士号取得。東洋英和女学院大学人文学部教授、弘前大学21世紀教育センター高等教育研究開発室長などを経て2011年より現職。FDによる授業改善の専門家として、先進諸国における最新の取り組みを授業に反映させている。著書に『学習経験をつくる大学授業法』(翻訳・監修、玉川大学出版部刊)、『「主体的学び」につながる評価と学習方法~カナダで実践されるICEモデル~』(翻訳・監修)、『ポートフォリオが日本の大学を変える~ティーチング/ラーニング/アカデミック・ポートフォリオの活用』(ともに東信堂刊)など。土持 ゲーリー 法一(つちもち げーりー ほういち)6

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