IKUEI NEWS vol81
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負けず嫌いの心が導いた「生産できるオタク」への道 もともと本が好きでした。小学生の頃から借りた数は学校一でしたし、市の図書館で借りた本のことも考えると、その倍は読んでいたと思います。でも、本を「読む」ことと「書く」ことは、必ずしも結び付くわけではありません。むしろ、読めば読むほど圧倒されて、自分で書いてみようなどとは意識の片隅にすら浮かびませんでした。 僕の高校には、生徒が寄稿できる一冊の雑誌がありました。一年に一度作られるそれは、装丁にもこだわった立派な「本」です。掲載される作品は、同じ高校の生徒が書いたとは思えないほど素晴らしいものが多く、ただ感心するばかりでした。ある時、その中でも特に面白いと感じたものを書いたのが、僕の友人であることを知りました。素直な尊敬と、「あいつが書けるのならば俺だって」という負けず嫌いの心。その時見ていた本にあった、「受動的なオタクになるな。生産できるオタクになれ」という言葉も、僕を動かしました。 僕は、勉強の傍、物語を書き始めました。自分の夢を、白い世界をそのまま書き出すもの。拙い小説を完成させ、身近な人に読んでもらいました。手放しの賞賛ばかりではなかったものの、自分の作った物語に反応が返ってくるということが無性に嬉しかったです。 3年の夏。受験勉強の息抜きとして、短編小説を書きました。剣道の話と、眠りの話。その2つの話は、高校の雑誌に掲載されました。僕の話が、ちゃんとした本になっている。手に取った時の感動は忘れられません。楽しいから、生涯書き続けていく 現在僕は、小説投稿サイト「小説家になろう」にて、『無彩色世界から始まる異世界山行』という物語を連載しています。40万字を越えるこの物語を紡ぎ出す長い長い旅路では、書けなくなることも、先が見えなくなることもありました。ただ山を巡る物語。話を作るには体験が不可欠ですから、この物語には自分の体験で得たものを込めることを意識しました。その甲斐あって、安定感のある面白い作品になったと自信を持って言えます。 他にも、妖怪TS(性転換)大学モノの長編小説『彼岸花の今日』を「MF文庫J ライトノベル新人賞」に提出しています。賞に出すのは初めてなので、結果がどうなるか楽しみです。 僕が書きたいのは、読んだだけで風景が眼前にバッと広がるような小説です。綺麗な風景を表現したくて、絵のような話が書きたくて、書き続けています。これが一生ものの仕事になるかは分かりません。ですが、一生かかっても味わい尽くせない娯楽であることは確かです。物語を書くのは、楽しいですよ。東京大学 理科二類 2年 石橋 正成小説家を目指し高校生から小説を書き続ける一生を捧げたい「小説作り」の面白さ高校時代、作品が掲載された校内誌『修猷(しゅうゆう)』。挿絵もつけてもらい、非常に感動しました。異世界へと旅立った2人の主人公、ユウキと剣(けん)の山旅の様子を描いた物語。〈2作品のあらすじ〉『無彩色世界から始まる異世界山行』妖(あやかし)のせいで狐耳娘にされてしまった男子大学生の大学生活を描いたお話。『彼岸花の今日』まさなりいしばし36

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