IKUEI NEWS vol81
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寺本 亜紀(てらもと あき)映像翻訳家、翻訳講師、ライター、キャリアコンサルタント。10年以上映画やドラマ、ドキュメンタリー番組の字幕・吹替・ボイスオーバーの映像翻訳を行っている。同時に、著名人などのインタビュー取材などライターとしても活動。その後、10代20代のキャリア教育の必要性を感じ、国家資格キャリアコンサルタントを取得。現在「ライフキャリアネットⓇ」を主宰し、個人や企業の従業員などのキャリアコンサルティングを実施している。リサーチ力とは、裏取り(事実確認)の正確さです。特に、宇宙やサイエンス、野生動物など専門性の高いドキュメンタリー作品の場合は、数字や固有名詞などの裏取りに時間がかかります。 映像翻訳は、約1時間の作品を10日から2週間で納品することが多いため、ハコ書きや尺合わせ、翻訳、裏取りと、納期までの時間管理が重要になります。納期が短いので病気で寝込まないように体調管理も欠かせません。体力が必要な仕事でもあります。 さらに、英語の微妙なニュアンスを表現する日本語の語彙力も求められます。おそらく皆さんの想像よりもハードな仕事の部類に入りますが、それでも映像翻訳ならではの喜びもあります。それは、翻訳する作品を通して、海外の文化に触れられること、さまざまなジャンルの作品を翻訳するので知的好奇心が満たされることです。文字数などの制約がある中でピタッと言葉がはまれば、パズルを完成させたときのような爽快感を味わえます。言葉だけで終わらず、文化を知ることが大事 映像翻訳では、中国語、フランス語、ロシア語などの原文から一度英語に翻訳されたスクリプトが届き、そこから日本語に翻訳することもあります。一番難しいのは、その国の文化的背景や慣習を表現することです。 日本の文化で考えてみると分かりやすいかもしれません。例えば「侘び」と「寂び」。来日したことのない外国人が、この言葉が持つ意味を限られた文字数の中で表現できるでしょうか。もし、その外国人が京都の枯山水の庭園を訪れて、日本の文化に触れていたら選ぶ言葉は変わるはずです。 日本国内でも英語は習得できますが、その国の文化や慣習を知るためには、現地の人たちと交流するのが何より大切だと思います。英語圏に限らず、他の国でも同様です。 海外の大学への留学は、単位や費用を考えると難しいこともあるでしょう。その場合は、夏休みなどを利用して1カ月間ホームステイをするのも、一つの方法だと思います。現地の人たちと交流することで初めて気付くこと、感じることが必ずあります。その一歩を踏み出したら、そこからまた新たな目標が生まれるかもしれません。 私は結婚後子ども2人を連れて、夏休みの1カ月間カナダ、アメリカ、オーストラリアで毎年ホームステイをしながら語学学校に通いました。翻訳を生業にするために必要な経験だと思ったからです。それを目標にお金も貯めました。子どもたちは現地校に通ったので、文化を肌で感じる貴重な体験になったようです。 私はキャリアコンサルタントでもあるのですが、相談者の中には、学生時代に夢を諦めて今でも後悔している方や、一度は諦めた映像翻訳家になる夢を叶えるため今なお努力されている方がいます。英語を使った仕事がしたいと思っているのであれば、初めから諦めることなく、グローバル社会へ漕ぎ出していってほしいと思います。学生時代にしかできない交流や学びがあります。言葉の壁を越えた先には、きっと新たな世界が広がっているはずです。わさ10

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