IKUEI NEWS vol81
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限られた言葉で表現する映像翻訳の世界寄稿●1寺本 亜紀映像翻訳家言葉の壁を乗り越えるには、その国の文化を知ることから翻訳をする上で最も大切なのは言葉ではなく、文化の理解。学生のうちに世界へ飛び出して、文化を肌で感じよう。英語力を活かす仕事とは 「英語を使う仕事がしたい」、「海外で働きたい」、そう考えたことはありますか? 英語力を活かす仕事には、海外拠点を持つメーカーや商社、外資系企業、貿易会社、航空会社、旅行会社、ホテル、通訳、翻訳などがあります。今回は、私が英日の映像翻訳をしてきて見えた世界について紹介したいと思います。 翻訳は、出版翻訳、実務翻訳、映像翻訳と大きく三つに分けられます。出版翻訳は、小説、実用書、絵本、漫画などの翻訳です。実務翻訳は、医療、特許、金融、IT、ゲームなどの翻訳で、専門の知識が必要になります。映像翻訳は、海外の映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの字幕や吹き替え、ボイスオーバーの翻訳をします。ボイスオーバーと吹き替えの大きな違いは、ボイスオーバーでは原音が小さな音量で流れている点です。リアリティを感じられるのでドキュメンタリー番組や海外ニュースなどでよく使われます。字幕や吹き替えの細かいルール 同じ映像翻訳の中でも、字幕と吹き替えの翻訳作業は大きく異なります。字幕翻訳は、画面に出す字幕スーパーを作るための作業です。まず初めにハコ書き(ハコ切り)という作業を行います。ハコ書きは、映像を見ながら英文のスクリプト(台本)にあるセリフやナレーションを字幕ごとにスラッシュ(斜線)で区切る作業です。近年は字幕ソフトをインストールしたパソコンを使って作業することも増えてきました。 翻訳する際は、「1秒で4文字」、「1行13〜16文字を2行まで」、「話者1人に1枚の字幕」など細かいルールがあります。読点の代わりに半角スペース、句点の代わりに全角スペースを使い、字幕が読みづらくならないように配置のバランスにも注意します。 吹き替え翻訳は、日本語音声を制作するときに演出家や声優が使用する台本を作ります。まず、音声の息継ぎ(ブレス)がある箇所で英文のスクリプトにスラッシュを入れます。原音のセリフの長さに合わせ(尺合わせ)、登場人物の口の動きにも合わせます(リップシンク)。ト書き(場面の状況や俳優の動き)やSE(sound eects:効果音)、M(music:音楽)、ガヤ(大勢のざわめき)などを書き込んで、日本語の台本を完成させます。 字幕は目で見て理解しやすい日本語を、吹き替えは耳で聞いて理解しやすい日本語を選びます。例えば、字幕では「同感だ」と訳出し、吹き替えでは「同じ考えだ」と訳出するようなイメージです。翻訳にはリサーチ力や体力、日本語の語彙力が必要 英日の映像翻訳は、英語力だけでなく、リサーチ力や体力、日本語の語彙力が求められます。明日への視点言葉の壁を乗り越えた新しい世界自分を育てる学生生活の過ごし方219

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