IKUEI NEWS vol.80
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 電通育英会と共同で、2007年から「大学生のキャリア意識調査」を、2008年から「大学生研究フォーラム」を開始した。この時期は、私が大学教育改革に携わり始めて10年と少し経った頃であった。世の中では、大学が「学生の学びと成長」の場になるという見方はまだまだ貧弱だった。当時の私は若手の研究者に過ぎなかったが、発信したい研究成果や知見がいくつもあった。発信の機会を与えてくれたこのフォーラムは、その意味でとても貴重であった。 初期のフォーラム運営には、プログラムの改編など苦い思い出が多い。また、初めの3、4年は集客が十分ではなく、電通育英会から「百周年時計台ホールを埋められませんか」などとよく御小言を言われたものだ(笑)。 ところが2011年から、すぐに定員いっぱいまで埋まるフォーラムとなった。一つ目の理由は、東京大学の中原淳さんが企画に参加し、「学校から仕事・社会へのトランジション」の出口を押さえてくれたことである。新たな参加層が加わったことは、手に取るように明らかだった。二つ目の理由は、㈱学研教育みらい(現:㈱学研アソシエ)協力のもと、「高校教諭のためのシンポジウム」を開催し、全国の高校の先生方が参加するようになったことである。これはトランジションの入口を押さえることにつながった。三つ目は、政府の施策と、フォーラムのキーワードが合致したことである。主に、2011年のキャリアガイダンスの法制化(正課教育に組み込むこと、汎用的技能の育成)、2012年の質的転換答申における「アクティブ・ラーニング」の施策化、2014年の学習指導要領改訂に向けての中教審への諮問(初等中等教育へも下りるアクティブ・ラーニング)等がある。時勢に則した教育課題に、政府の施策を先取りしたり併走したりする形で取り組んできたということは、大きな成果であった。 大学生研究フォーラムは、その規模から考えて、大学生の学びと成長をテーマにした教育改革に関する情報発信の場であった。重要だと考えてきた多くのことは、いま文部科学省の施策として実施されている。この上で、今なすべきことは、アクティブ・ラーニングや学習とキャリアの架橋、トランジション・リレー、エビデンスベースなどの考えや実践を教育現場へ浸透させること、トランジションの先として対応する仕事・社会を変革することである。次のステージの準備は、このフォーラムの最終回を迎える前から既に始まっている。また、皆さまと次の企画やその他関連の場でお会いできること、実践の交換をしていくことを楽しみにしている。 議論をしてきた参加者の皆さま、パートナーである電通育英会のスタッフ、中原さん、そして私の活動を支援してくれた京都大学のスタッフ・大学院生たち、10年間ありがとうございました!フォーラムとともに歩んだ10年間―大学生と高等教育京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授 溝上 慎一2017大学生研究フォーラム22

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