IKUEI NEWS vol.80
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り前になってきました。長期化する自分の仕事人生をいかに生きるかが問題となってきています。 働く現場、未来は常に変化し続けています。現状のリアルを知り、昭和の労働観を脱することが大切になってきています。松下 本フォーラムの貢献について、大きく三点挙げていきます。 まず一つは、「学生の学びと成長」の実態・課題を明らかにするという非常に明確な目標に沿って、それを支援するネットワークと手立てを作ってきたことです。 次に、高校・大学関係者から企業、地域の方まで、多様な利害関係者が関与している点です。ここまで幅広い人々が関わるイベントは他にはほとんどありません。 最後に、フォーカスの明確さがあります。私の研究テーマでいえば、「能力」では知識よりもジェネリックスキルや態度、「学習」では正課よりも準正課や正課外。「評価」では、エビデンス重視。学生調査などによるデータ提供と分析、さまざまな先進事例の紹介・共有は非常に大きな貢献だと思います。児美川 私からも三点申し上げたいと思います。 一つ目は、大学生研究の枠組みづくりという点です。大学時代だけでなく、高校、社会まで広げてトランジションの視点を踏まえた研究の枠を作ったという点で、成果のあった10年だったと思います。 二つ目は、研究と実践の往復について弱さがあったかもしれないという点です。研究結果はクリアなのですが、そのことと高校や大学で行われている現場の教育とのつながりがあまり見えてこないという印象を持ちました。 三つ目は、議論の対象となる大学生の「層」が分かりにくかったという点です。基礎学力においても意識においても、学生一人ひとりを見ると雲泥の差があるはずです。そこを明らかにできれば、参加者側はもっと時々の議論の本旨を捉えやすかったのではないかと思いました。中原 私は企画者の立場からお話させていただきます。 感慨深いのは、溝上先生と協力して、企業と大学を「トランジション」という概念でつなげられたことです。企業の研究をやればやるほど教育機関の大切さを痛感していた時期に、幸運にも溝上先生にお声がけいただけました。この出会いと数年間のコラボレーションは本当に充実したものでした。 やり残したこととして、情報提供モデルに課題があったことがあります。年一回のイベントでの情報提供という役割に限界を感じ、悩んでいました。フォーラムを、もっと現場にインパクトを与えられるような、各学校における「コアリーダー」を育成できる場にしていくことができなかったのは心残りです。松下 教育における今後10年は、大きな枠組みは変化しないけれど、その中で何が重要なのかは変化していくと思います。想像できないスピードで人工知能が進化する時代、その中で人間の教育として何が必要なのか。日本の人口が減少し、子どもたちが減ってくる中で、この限られた子どもたちにどんな教育を行っていくのか。こうしたことが、より一層重要になってくるだろうということを改めて感じています。児美川 これからの10年、キャリア教育はセカンド・ステージを迎えます。理想を実現するには、普段の学びが実はキャリア形成に深く関わっているという事実を浸透させていくことが大切です。だからこそ、これからのキャリア教育は「日常の学び(広義のキャリア教育)」と「狭義のキャリア教育」の二層構造で考えるべきだと思っています。 そして、キャリア教育を社会に着地させる時に、職業・専門教育をどのように施していくかという問題は避けられないように思います。中原 「手厚く支援をすると学び手が受身になる」。この言説を信じ切って、学習やキャリア支援の発展が滞ったり、後退してしまうことが今後の10年で一番怖いことです。この二つの因果関係を疑って、きちんと検証していくことはこれから大事になると思います。中原 あっという間の一日、お楽しみいただけたでしょうか。溝上先生をはじめ、京都大学、電通育英会、関係者の皆さまのご支援に改めて感謝申し上げたいと思います。「10 years リフレクション」というテーマでしたが、リフレクションをするからには次のアクションにつなげることが大切です。私自身も今日の振り返りを以って、今後について考えていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。大学生研究フォーラムの 10年を振り返って②次の 10年について③閉会の言葉14

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