IKUEI NEWS vol.80
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パネルディスカッション溝上 慎一司会パネリスト京都大学高等教育研究開発推進センター 教授松下 佳代京都大学高等教育研究開発推進センター 教授児美川 孝一郎法政大学キャリアデザイン学部教授 中原 淳東京大学大学総合教育研究センター 准教授2017大学生研究フォーラム松下 教育方法学を専門とする私の大きな研究テーマである、「能力・学習・評価」の三つについて10年を振り返ります。 以前は、「能力」といえば知識や技能が主でしたが、そこにジェネリック・スキル(社会人として活躍できる能力)や、態度・性向(行為の傾向性)などが加わり、他者との関係構築や自己を見つめ直すことまで含まれるようになりました。同時にメタ学習(※)の重要性も認識されてきました。 「学習」では、小学校から大学までアクティブ・ラーニングで資質・能力を育成する方法が普及してきたこと。学力形成には正課だけでなく、準正課・正課外の役割が見直されてきました。 「評価」に関しては、学生の学びと成長に関するエビデンスの蓄積が進んだことが挙げられます。「大学生のキャリア意識調査」をはじめとした長期的な調査や、入試学力以外の評価がこれからますます教育に影響を与えることが予想されます。児美川 ここ10年、キャリア支援・教育は大きく変化してきました。 大学でのキャリア支援の対象は就職活動+キャリア形成になり、時期は1年次から4年次までシームレスになりました。しかし、大学のキャリア支援・教育は大学教育本体と連携しているわけではなく、「外付け」のキャリア支援・教育として拡充されてきました。さらに、その担い手は、キャリアの専門家などと呼ばれる外部人材に依存している状態なのです。 また、初等・中等教育のキャリア教育は、これまでは職場体験などの「イベント主義」で、学びとは別の次元にありました。しかし今では、社会課題解決型の教育が出てくるなどの変化が見え、イベントから日常の活動への転換を図る動きも見え始めています。 現在、キャリア教育は転換期にあり、セカンド・ステージが見えてきています。これからは、大学や高校以前を含めてキャリア教育を日常化し、日々の授業や活動が効果を生むように整えることが必要です。中原 私からは、企業の人材開発における10年間の三大変化をご紹介します。 一つ目は、現場の育成力強化が進んできたこと。終身雇用や年功序列が崩壊するなど雇用慣行の変化で、今までのOJTは機能しなくなってきました。そこで、もう一度職場での人材育成をゼロから立て直そうと、工夫した育成の取り組みが多くなってきています。 二つ目は、働き方の多様化です。雇用形態の多様化により、正社員だけでなく嘱託や契約社員など職場メンバーそのものが多様になりました。そして、育児・介護等による短時間勤務やテレワークが増加し、働き方も多様化してきました。さまざまな事情を持った労働者にいかにして長期間働いてもらうかが課題です。 三つ目は、仕事人生の長期化です。人間が100年生きる時代に突入し、80歳まで働くようになるとも言われるようになりました。かつては一つの職場で長年働くことが普通でしたが、今では複数の職場が前提のキャリアが当た 大学生研究フォーラム最後の締めくくりとして、長年フォーラムに携わっていただいた方々と、これまでの 10年を振り返って意見交換をしていきたいと思います。パネリストは、教育方法学がご専門の京都大学・松下佳代教授、キャリアデザインがご専門の法政大学・児美川孝一郎教授、企業の人材育成やマネジメントがご専門の東京大学・中原淳准教授の3名です。 パネリストの先生方には、①自分の専門分野・研究における 10年を振り返って、②大学生研究フォーラムの 10年を振り返って、③次の 10年について、という3つのテーマでそれぞれ語っていただきます。※ 俯瞰的視点を持って学習を考えること。自分の専門分野・研究における 10年を振り返って①13

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