IKUEI NEWS vol.80
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「雇用が財産」の時代から「キャリアが財産」の時代へ 最近ベストセラーになった『ライフ・シフト』という本に、「2007年生まれの日本の子どもの半数は107歳まで生きる」という記述があり、大きな話題となりました。ここまで寿命が延びると、今まで日本が行ってきた、18〜22歳頃まで教育を受け、その後仕事をし、65歳で引退というキャリアの形は通用しなくなります。根本から考え直し、もっとさまざまな形のキャリアを検討しなければならない時代が来ています。 しかし、社会全体のキャリアへの考え方はいまだに変化していません。なぜなら、働く人の約9割が雇用という現代社会において、「働く人=雇用」だと社会が思い込んでいるからです。入社する社名のブランドや、終身雇用・年功賃金などの安定性に価値を見出す、「雇用が財産」という価値観が根付いているのです。 働く人は必ずしも雇用とは限りません。1955年の働く人に占める雇用の割合は50%以下で、町中には小さな商店が溢れ、自営業を営む人がたくさんいました。それが20世紀に入って、大型ショッピングモールの進出や、パート・アルバイトなどが増え、現在の雇用中心の働き方に変化していきました。 ところが、昨今ではフリーランスで活躍する人も増えるなど働き方の多様化とともに、雇用全盛の時代はピークを越えています。加えて人生100年時代も到来するとなると、「雇用」だけに頼ろうとすることは現実的ではありません。 これからは、スキルや知識、人とのつながりなど目に見えない資産を大切に、人生を大きく捉えてキャリアの充実を図らなければなりません。「雇用が財産」から「キャリアが財産」という考えにシフトしなければならないのです。越境経験が大きな学びとなり、キャリアを伸ばす 私が研究する企業の人材育成という観点でも、変化する時代に対応すべく、いま関心を寄せているのは「越境学習」です。会社内だけでなく、境界を越えて組織の外にも学びに行く。すると、境界の中では当たり前だと思っていたことが、実はそうではないと気付くなど、境界の内側では得られない学びがあります。こうした「越境」経験がキャリアを発達させるのです。 越境学習については、「個人が所属する組織の境界を往還しつつ、自分の仕事・業務に関連する越境経験がキャリアを育てる内容について学習・内省すること」、と東京大学の中原淳准教授が定義しています。ここでのポイントは「往還」と「内省」。つまり、会社の外の勉強会などに単に参加するだけではなく、それを繰り返し行い(往還)、何が自分と異なり学びになったのか考える(内省)ことが、重要なのです。 越境学習の考え方は、企業だけでなく大学生にも応用できると考えています。例えばインターンシップやアルバイトでも、越境的な学びが発生します。これを学びとするのに大切なのは、往還と内省を意識して仕組み化すること。前後にキャリアカウンセリングをつけて内省する期間を設けるなど、きちんと体制が整えば、越境学習の考え方は大学生にも大きな効果をもたらすでしょう。京都大学 高等教育研究開発推進センター 准教授山田 剛史ファシリテーター法政大学大学院政策創造研究科 教授石山 恒貴のぶたかつよしいしやまやまだ9

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