IKUEI NEWS vol.79
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 大学教育での「教養」を考えてみましょう。日本の大学の多くは、1〜2年次に教養教育、3年次から専門科目を履修するのが一般的でした。しかし、時代の進歩とともに、学ぶべき専門課程の内容はどんどん増え、次第に教養教育の時間を侵食していきました。1991年に当時の文部科学省が大学教育の自由化を目的に、「大学設置基準の大綱化」の方針を打ち出したことをきっかけに、多くの大学では教養課程が縮小され、教養教育は衰退の一途をたどることとなりました。 しかし、専門分野の勉強にまい進するあまり、大学生や大学卒業生の「教養」のレベルを問題視する声が世間から上がるようになりました。やがて大学進学率が50%を超えて大学生が急増する中で、十分な教養教育の重要性に、大学も、大学生を受け入れる社会も気付き始めました。高い専門性と同程度に教養の必要性が認識され始めたのです。 こうして2002年には、文部科学省の中央教育審議会答申において、「新しい時代における教養教育の在り方について」が発表され、大学はもう一度教養教育を見直すことになりました。文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について」によれば、教養教育を実施するための全学的な組織を設置する大学は2013年の時点で国公私立全体で6割を超えています(図2)。公立大学は全83校中46校、私立大学は全601校中359校と半数以上。国立大学では全86校中74校で8割以上と、多くの大学が教養教育に力を注いでいます。 現在、さまざまな大学で、リベラルアーツセンターなどの教養教育を実施する組織の設置や、学部横断的な教養教育の実施など、教養教育の改革が進んでいます。 日本で初めてアメリカの「リベラルアーツ」を取り入れた国際基督教大学によると、「リベラルアーツとは、文系、理系の区別なく幅広い知識を得た後に、専門性を深めることで、豊富な知識に裏打ちされた創造的な発想を可能とする教育」であるとしています。入学時の希望で専門分野を決定してしまうのではなく、大学では文理を問わずさまざまな学問を学ぶことで視野を広げ、卒業時に自分の進みたい道を決めるのです。 大学の取り組み状況を見ると、従来の教養教育を再構築するところもあれば、欧米式のリベラルアーツを取り入れるところもあり、工学系の教育などでは、大学院まで含めた「6年一貫教育」制度の設計も進んでいます。 今までの専門をとことん極める大学教育は形を変え、専門分野の深い知識を持ちつつ、文理の壁を超えた多分野にわたる広い知識を持つ人材を育てるようにシフトし始めています。 知識だけでなく、思考力や心にも関連する教養は、教育の中だけで身に付くものではありません。今号のインタビューからは、勉強以外で教養を身に付け、育てる方法も見えてきました。 まず、一つが「読書」です。編集部インタビューにご登場いただいた、ライフネット生命保険㈱の創業者である出口治明さん(5〜6ページ参照)と㈱教養学舎代表取締役の望月馨さん(7〜8ページ参照)は、読書の重要性を熱く語っています。専門性を高め過ぎていた大学教育での教養の見直し「狭く深い」知識から「広く深い」教養へ考える力や精神力も鍛えてくれる読書〈図2〉 教養教育を実施するための全学的な組織を設置する大学文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について」(平成25年度)より合計平成25年度(62.9%)(校)01002003004005003594794674国立大学公立大学私立大学かおりはるあき3

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