IKUEI NEWS vol.79
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※文法、論理、修辞、幾何、算術、天文、音楽。おける、「自分を自由にする技」のことです。奴隷的存在から自由市民になるための7つの素養(※)、それがリベラルアーツでした。 さて、現代人は自由でしょうか。評価ばかりを気にする学生は「このレポートの評価軸はどこですか?」とあらかじめ聞いてきます。教えると多くの学生から、全く似たようなレポートが提出されます。そんな学生たちは自由人と呼べるのでしょうか。それとも評価システムにがんじがらめの奴隷でしょうか。 リベラルアーツという言葉が使われるようになったのは、以前本学で行われていた教育のような、広範な知識を与える「教養教育」よりも、自由に創造性を持って生きるための「リベラルアーツ教育」が重要になってきたからだと思います。現代のシステム社会の中で、自分自身の「志」をもって生きていくためには、リベラルアーツ教育が不可欠なのです。タテヨコのつながりで育まれる「志」ある学生たち ここからは、「志を育む」本学の新しいリベラルアーツ教育をご紹介しましょう。新たに導入されたのが「教養コア学修科目」です(図)。 「東工大立志プロジェクト」は、約1100人の新入生が、著名講師による講義や少人数クラスでのディベートなどを通し、大学生活における「志」を立てるために行われます。第3学年の後期の「教養卒論」では、全員がリベラルアーツの卒論を執筆します。1年生の時の少人数クラスが再結集し、学んできたリベラルアーツを自分の研究にどう生かすのか、世界のいかなる問題にコミットしていくのかをより具体的に詰めていくというものです。 修士課程1年次では「リーダーシップ道場」があり、「ピアレビュー実践」において3年生の教養卒論の執筆をサポートしつつ、「リーダーシップアドバンス」の一環で東工大立志プロジェクトにファシリテーターとして参加します。博士課程では、最先端の研究の「種」を具体的な課題にどう活かすべきかグループで議論して、最後はポスター発表をします。 同じ学年の「ヨコのつながり」を確保しながら、学年を超えた「タテのつながり」も意識した立体的なプログラム、それが本学のリベラルアーツ教育なのです。昨年から開始されたこのプログラムは、既に大きな成果を上げつつあります。まだ即断はできませんが、数年後には、自由な発想力と創造性を持った学生達が社会に羽ばたいていくことでしょう。(図)教養教育の骨格をなす2年ごとの教養コア学修東工大立志プロジェクト必修/2単位学士課程必修/2単位選択必修/1単位修士課程ファシリテーションピアレビュー選択必修/1単位博士後期課程教養先端科目リーダーシップアドバンスピアレビュー実践教養卒論リーダーシップ道場学生プロデュース科目文化人類学者。医学博士。東京工業大学教授。リベラルアーツ研究教育院長。1958年、東京都生まれ。東京大学大学院文化人類専攻博士課程修了。スリランカでの「悪魔払い」儀礼のフィールドワークから「癒し」という言葉を初めて日本社会に提示する。日本社会の生きづらさとそこからの解放を提示した『生きる意味』(岩波新書)は2006年度大学入試出題数第1位となり、数社の高校国語教科書にも掲載されている。著書に『かけがえのない人間』(講談社現代新書)、『ダライ・ラマとの対話』(講談社文庫)、『人生の〈逃げ場〉 会社だけの生活に行き詰まっている人へ 』(朝日新書)他。近著は『人間らしさ 文明、宗教、科学から考える』(角川新書)。上田 紀行(うえだ のりゆき)14

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