IKUEI NEWS vol.78
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須藤 春佳(すどう はるか)大阪府生まれ。京都大学教育学部卒業後、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。臨床心理士。PCIT認定セラピスト。京都文教大学専任講師を経て、2010年に神戸女学院大学人間科学部専任講師、2016年より現職。専門は臨床心理学。子ども~青年期の心の発達や心理療法をテーマとしている。著書は『前青年期の親友関係「チャムシップ」に関する心理臨床学的研究』(風間書房)、「視覚障害をもつ子どもの遊び」(日本遊戯療法学会編『遊びからみえる子どものこころ』日本評論社所収)など。 一方、最近の友人関係研究の流れの中で、お互いの領域に深く立ち入ろうとしない「希薄化」傾向があるとの指摘や(岡田、1995)、SNSの急速な普及と相まって、状況に応じて自分や相手などを選択的に切り替える「状況に応じた切替」(大谷、2007)という付き合い方があるなど、従来とは異なる傾向が示唆されています。現代青年は、表面的に円滑な関係を求め、人間関係の対立を回避するため、関係の維持に神経を使う傾向もあるといわれます。 しかし、全ての青年がそのような傾向にあるわけではなく、大学生の友人関係を「広さ―狭さ」、「深さ―浅さ」、「切替」という3軸をもとに類型化を行った齋藤(2016)によれば、浅く広く切替をしながら友人と付き合う人もいれば、深く友人と付き合う人もいて、多様な付き合い方があることがわかりました。また、「深く広く」付き合う人の充実感は高く、「切替」を使って付き合う人のストレスは高かったことから、「切替」を用いる付き合い方はその場での衝突を回避し安全なようでいて、生活全体の中のストレスは高く、メンタルヘルスの上では親友のような「深い」付き合いのできる友人がいる方が良いと考えられます。大学生・大学院生の時期に親友を持つこと 冒頭で、親友は前思春期に出現すると述べましたが、決してこの時期のみに生じるものではなく、人生のどの時期においても持てるものだと思います。ただ、生活環境等の変化から言って、私は、大学生・大学院生の時期こそ、最後に親友が持ちやすい時で、この時期にこそ親友を持つべきだと思います。 大学生時代というのは、自分がこれから社会に出て何者になるのか?を問う時間を与えられた時期で、異性との恋愛も関心事となり、そんな時期だからこそ、同じ立場にいる同性の友人と、お互いの考えや感じ方を対等な立場で話し、共有できることがとても意義深いと思うからです。自分の考えが友人にどう受け止められるのか、友人の考えを知れることは、自分を相対的に見る貴重なチャンスとなり、また友人に受け入れられることで安心や励みにもなります。特に、親元を離れて一人暮らしをしている人は、親との関係も見直す契機になるでしょうし、友人と話す中で、改めて自分の家族についての発見があることも多いと思います。大学院生にもなると、同じ環境にいる友人は一定の同じ方向性を目指す「同志」として、時にはライバルになることもあるでしょうが、研究活動などへの思いや悩みを共有できる貴重な存在となり、多くの時間を共にする中で、影響を与え合えるはずです。 私は今でも、大学生時代の友人とのエピソードを思い出すと、自分について、将来について、真剣に考え、また日々の中でたくさん笑い合って過ごした時間が懐かしく、輝いて感じられます。今でも連絡を取っていますが、あの関係性は、あの時しか築けなかったと思いますし、貴重な財産となっています。みなさんも自分にとってかけがえのない「親友」をぜひ作ってください。参考文献:榎本淳子(1999). 青年期における友人との活動と友人に対する感情の発達的変化. 教育心理学研究,47, 180-190.岡田努(1995). 現代大学生の友人関係と自己像・友人像に関する考察. 教育心理学研究, 43, 354-363.大谷宗啓(2007). 高校生・大学生の友人関係における状況に応じた切替-心理的ストレス反応との関連にも注目して-. 教育心理学研究, 55, 480-490.齋藤千紘(2016). 大学生における友人関係の特徴とインターネット利用行動との関連. 神戸女学院大学大学院人間科学研究科修士論文(未公刊).Sullivan, H. S.(1953). The interpersonal theory of psychiatry. New York: Norton. 中井久夫・宮崎峰吉・高木敬三・鑪幹八郎(訳)(1990). 精神医学は対人関係論である. みすず書房. 18

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