IKUEI NEWS vol.78
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明日への視点かけがえのない友達をつくる自分を育てる学生生活の過ごし方19インターネットと向き合い、閉じた人間関係から脱却する寄稿●1土井 隆義筑波大学 人文社会系 教授会話の友と、対話の友と~人間関係の軸足を増やそう~インターネットの普及により、「同質」な友達としか接しない若者が増加。自分の可能性を知るには、「異質」な友達とも出会うことが必要。インターネットの発達は同質な友人とのつながりも強めた 私たちの調査によると、局面に応じて友達を使い分けるという若者がこのところ増えているようです。それが可能になった背景には、恐らく近年の通信環境の発達があるでしょう。ネットを駆使することで、サークルなどの既成の枠組みにとらわれない関係づくりが容易になっているものと推察されます。 しかし、この調査によると、友達と知り合った場所の多彩さは、現在の方が少なくなっています。出会いの幅が広がっているわけではなく、逆に狭くなっているのです。実際、ネットを通じて知り合った友達は、今でもごく僅かですし、その実数もほとんど変化がありません。依然として、出会いの多くは学校の中なのです。 現代の若者たちの友人関係は、ネットの発達によって拡大したわけではなく、むしろ限られた世界の中での細分化が進んでいるようです。確かに、ネットによって人間関係の流動性は高まりましたが、時間と空間の制約を超えて異質な人々が出会い易くなったと同時に、同質な仲間同士がつながり続け易くもなりました。そして現在は、後者の比重が高まっているのです。気の合う相手だけと付き合いがちになった  大学のような組織には、多種多様な生育環境を背景に、異なった価値観を育んできた学生たちが大勢いるはずです。しかし、制度的な枠組みの拘束力が弱まってくると、自分と気の合う相手だけと付き合うことも容易になり、異なった価値観の人間と意見をぶつけ合う機会は減っていきます。実際、先ほどの調査によれば、友人と意見が合わなかった時に、納得のいくまで話し合いをするという若者は大幅に減少しています。互いに深入りをしない付き合いが増えているのです。 こんな喩えで考えてみましょう。複数の瓶の中にさまざまな色のビー玉が入っているとします。かつては瓶の蓋が固く閉じられ、ビー玉がきつく詰め込まれていたので、個々のビー玉は自由に動けませんでした。そのため、他の瓶のビー玉と交わることは困難でしたが、同じ瓶の中では互いに色の異なったビー玉が否応なく接し合っていました。しかし現在は、瓶の蓋が緩んで外れ、瓶の中の密度も下がり、個々のビー玉が自由に動き回れるようになりました。 その結果、蓋が開いた瓶の口から飛び出し、他の瓶の様々な色のビー玉と交わるようになったかというと、現実にはそうなりませんでした。むしろ動きやすくなった瓶の中で、同じ色のビー玉同士で引っ付き合うようになったのです。もちろん、別の瓶へ移動するビー玉も中にはありますし、外部から別の瓶のビー玉が入ってくることもあります。しかし、その場合でも、互いに同じ色のビー玉同士で引っ付きやすくなったのです。同質な関係だけでは「自分」が見えてこない なぜ、このような状況になったのでしょうか。瓶の中いっぱいにビー玉が詰め込まれていた時代には、11

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