IKUEI NEWS vol.78
12/40

つながりたがる若者は現代社会の圧力によって生まれた 私が「孤独」に着目したのは、若者の「つながりたがる」傾向に気付いたからです。この傾向は東日本大震災以降、強まったように思います。「絆」という言葉が広まり、「人は一人では生きてはいけない」という面が大きくクローズアップされました。確かに人間は一人では生きていけませんが、それが予期せぬ方向に、しかも、大袈裟に捉えられてしまったのではと私は感じます。 「みんなでいるのは良いこと」、「友達が沢山いるのは良いこと」、「コミュニケーション能力があるのは良いこと」。世間では、積極的でプラス思考、コミュニケーションが上手で周囲に友達が沢山いる、という人間像が理想となっていきました。そのような流れから、友達を沢山作らなければいけない、一人ぼっちはいけない、という社会からの無言の圧力が若者にかかるようになりました。 さらに、インターネットが普及した現代は、情報過剰な「超コミュニケーション社会」です。特に、携帯電話やSNSの登場で、いつでもどこでも誰とでも連絡が取れ、会話やメールをするようになりました。便利である一方、そのバーチャル上の関係を維持するために、絶えずスピードのあるコミュニケーションをしなければ、という強迫じみた感覚が生まれてしまいました。常につながっていなければ不安でしょうがない。若者が一人でいられなくなったのは、こうした環境が大きく関係しているのです。環境に振り回されない「孤独力」 しかし、そもそも何をするのにも人間は一人です。朝起きるのも、トイレに行くのも、普段の生活は基本的に一人で行動します。仕事でも勉強でもスポーツでも、その過程では周囲の協力がありますが、結局最後は一人の力でやらなければならないことは多くあります。 友達だって、いくら多くいても実際に付き合っていくのはごく一部ですし、常に一緒にいるわけではありません。孤独は決して悪いことではなく、言ってしまえば人間本来の姿なのです。 孤独というとネガティブに聞こえるかもしれませんが、それは「孤立」と混同しているからです。英語でいえば、孤独はsolitudeで、一人でいる状態。一方の孤立はlonelinessで、寂しいという心理的な状態を指します。私はこの孤独という言葉をポジティブに捉え、「孤独力」というものを提唱しています。 孤独力とは、簡単に言えば、「自分を見つめ直すことで、他人や社会に依存せずに一人になれる力」。自分自身を理解して、世間の風潮や超コミュニケーション社会に振り回されず、一人であるという不安や恐怖にとらわれずに生きていける力が「孤独力」です。自己内対話と読書が孤独力を育てる 孤独力をつけるには、外部の情報をシャットアウトして、一人になる空間と時間を意図的に作る必要があります。テレビやインターネット、友達からの連絡などを完全に遮断し、一人でぼんやりと何もしない時間を作ります。これが孤独力を椙山女学園大学名誉教授 武長 脩行超コミュニケーション社会に必要な「孤独力」すぎやま9

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る