IKUEI NEWS vol.78
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一生の友達が作れるのは大学時代まで 中学・高校生くらいまでは、自分を映し出す鏡のような存在である友達。自分と同じだと思い込んでしまうからこそ、素行の悪い友達ができるとモデル機能が悪い方向へ働き、つられてしまうこともあります。それが大学生くらいになると相手との違いを前提とした付き合いができるようになります。 社会人になってからの友達は、3種類の機能は役割をほぼ終えて、これまでよりも必要性が低くなってきます。もちろん、愚痴や悩みを言い合うような関係はできますが、心を分かち合って一生付き合う相手というよりは、仕事上のニーズを満たすような、利害関係のある「人脈」へと変化してしまいます。さらに、社会人になると、友達との関係から徐々に恋人・配偶者との関係へシフトするため、友達に割く時間もなくなっていくのです。 社会人になってからでは、友達の意味が大きく変わり、出会いも多くはありません。一生深い付き合いができる友達を作るなら、大学生は最後の機会と言ってもよいでしょう。「安定化の機能」、「社会的スキルの学習機能」の3種に分類しています。 1つ目の「モデル機能」は、友達が自己の行動や自己認知のモデルとなるということ。そもそも本格的に友達が欲しくなるのは、親離れをし始める中学生頃です。それまでは何でも親に話し、秘密も持たなかったのが、思春期に入ることで親に話せないことが増えてきます。そのときに、悩みや秘密を打ち明け、支えとなる相手として友達が重要な役割を果たすわけです。一緒に悩んだり、アドバイスをし合ったりすることで、友達の中に自分自身を見ることができ、個人を形成していく上で、友達が模範的存在となるのです。 2つ目の「安定化の機能」は、友達と一緒にいたり、話したりすることで、緊張や不安、孤独などの精神的な不安を鎮めてくれる効果のことです。 3つ目は、「社会的スキルの学習機能」で、友達とのコミュニケーションの中で対人関係の技術を学べる機能です。言っても良いこと・悪いことの判断などの人間関係を良好に保つ技術は、やはり人付き合いの中で自然に身に付くもの。友人関係から遠ざかっていては、社会的スキルの習得は難しいのです。肩肘張らない関係こそが本当の友達 冒頭で今の友人関係は「気を使う」特徴があると述べましたが、傷つけ合うことを避ける傾向は、実は昔から大きく変化しているということはありません。近年研究が進んで、「ランチメイト症候群(※)」などの現象として取り沙汰されたことが、かえって「友達がいないとダメだ」という意識を助長し、気を使う若者を生んだのかもしれません。 大学が友達づくりを支援するようになったのも、ここ10年ほどです。大学にとって一つの魅力向上の戦略という意味合いもありますが、大学でもそれだけ友達がいないことは問題として意識されているのです。 今の大学生にアドバイスできるとすれば、友達がいなければならないという圧力を気にせず、自分がやり易い接し方をすることです。無理をして友達を作ろうと輪に飛び込んだり、気を使い過ぎたりする必要はありません。一人でいることを恐れず、こうすべきだという考えを捨てて、肩肘張らないコミュニケーションをしてください。それで接してくれる相手が、あなたの本当の友達なのです。1960年神奈川県生まれ。学習院大学文学部心理学科を卒業後、1985年に立教大学文学研究科博士前期課程(心理学)を修了。1991年には東京都立大学人文科学研究科博士課程(心理学)を単位取得退学。その後、新潟大学教育学部助教授や、立教大学文学部 学校社会教育講座助教授を経て、2008年より現職。「青年期の対人関係と自己概念」を主な研究領域としており、「現代青年の友人関係と自尊感情の関連について」など、現代青年の友人関係についてのさまざまな論文を発表している。岡田 努(おかだ つとむ)※学校や職場で一緒に食事をする相手がいないことに恐怖を覚えるというもの。8

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