IKUEI NEWS vol.78
10/40

気を使うことで傷つくリスクを避ける現代の若者 1980年代のバブル初期の頃、若者の実態に興味があった私は、「人付き合い」に着目し、友人関係についての研究をスタートさせました。 私は、現代若者の友達との関わり方は、「本音でぶつかり合う関わり」、「表面上を楽しく付き合う関わり」、「距離を置いて深くは関わらない」の3種類に分けることができると考えています。 昨今はインターネットやSNSが発達し、ネット上だけでコミュニケーションを済ませる表面的な付き合いが増えたことで、以前よりも友人関係が希薄になっていると世間では言われることがあります。しかし、実際に調査をしてみるとそうではなく、「本音でぶつかり合う関わり」も少なくありません。 本人たちは本音でぶつかっているつもりなのに、なぜ世間からは友人関係が希薄化していると思われてしまうのでしょうか。それは現代の友人関係の「気を使う」という大きな特徴が関連しています。関係が悪くならないように、相手も自分も傷つかない配慮をしていて、口論などの傷つくリスクは避けたがる。以前なら友達と呼ばないような浅い関係の人まで友達と呼ぶようになった、「友達観」の変化が希薄という印象につながっているのです。過度な評価社会が若者を臆病にしている 友達に気を使うようになった原因の一つには、現代社会では他人から評価される機会が増えてきたということがあります。常に自分がどう評価されているかを気にしながら生きる世の中、いわゆる「評価社会」です。友達から悪く評価されることを恐れ、それを回避しようという考えから、気を使おうとするのです。 悪い評価を避けるパターンにはもう一つ、友人関係から身を引いてしまうことがあります。若者の友人関係が希薄になったというイメージは、「ぼっち」などという言葉の流行でこちらのパターンが目立ってきているからでしょう。 友人関係から身を引くタイプには、自ら完全に人間関係の外に出てしまうものがあります。人間関係に恐怖を覚え、完全に友達なんていらないという思考になってしまうようです。 グローバル化を推し進め、コミュニケーション能力が重視されるなど、非常に強い外向き志向である現代。評価されるのは、外交的な人間ばかりです。そうした世の中が、外向き志向についていけない学生たちを振り落とし、結果的に内向きな人間を「ぼっち」や「ふれあい恐怖」に追いやり、いじめにまでつながってしまうように感じます。友達がいることの3つの効果 とはいえ、友達は基本的にはいることが望ましいです。なぜなら、友達という存在は人として成長するのに必要なさまざまな役割があるから。社会心理学者の松井豊先生は、青年にとっての友人関係の機能を「モデル機能」、金沢大学 人文学類教授 岡田 努なぜ友達は必要なのか7

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る