IKUEI NEWS vol.77
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受験に向けて少ない時間でも毎日コツコツ勉強し、効率良く目標を達成するという経験は、勉強をする習慣が十分には付いていない学生にとってはプラスに働きます。 自分の「世界」が広がることも資格取得の良いところです。資格取得のために勉強をすることで、今までは知識としてのみ持っていたことを体系的に学ぶことができます。例えば、秘書検定でマナーや身の振る舞い方を学び、会社組織というものを知ることで、将来組織で働く自分の姿を意識したり、学部で勉強している経営系の科目が現実のものとして理解できたりします。 資格にチャレンジするなら、自分の専門とつながりのある資格に挑戦する方が望ましいと思います。また、自分の専門外の資格でも、専攻分野との関係性が見えてきた時に自分の視野はぐんと広がるでしょう。欧米の大学で行われる「ダブルメジャー」のように、資格で勉強したことを自分の専攻する分野やキャリアに結び付けることができれば、とても良い効果があると思いますね。挑戦するならば資格に対する正しい認識を持つことが大切 キャリア形成の観点から考えると、同じような難易度の試験であれば資格自体は何でも構わない、でもそれは自分の頑張りを表す付加価値なのだと考えている節があります。ひとえに軽視はできない資格取得のメリット ただ、就職活動のために取った資格は、自分の付加価値にはなるかもしれませんが、絶対的な効力を持つものではありません。例えば、旅行業務取扱管理者の資格を持っている学生が旅行会社を受けたとしても、その資格の保持だけが採用の決め手となることはないと企業の方は断言しています。日本の企業の多くは、その人物を評価し、採用を決めているからです。 しかし、大学生の資格取得は一概に無駄ということではなく、もちろん良い面もあります。まず一つとしては、自信が付くということです。その資格の難易度が高ければ高いほど、やり切って合格したときの達成感は大きなものとなり、それは自己肯定感にもつながります。 それから、座学の習慣が付くということ。学部の勉強をおろそかにしている学生や、推薦入学で一般受験をくぐり抜けてこなかった学生たちには、このことは大きなメリットになるかもしれません。資格の内容そのものよりも、資格にチャレンジしようということに意味があると思います。変化が激しい現代社会では、一人の人間がずっと同じ仕事をしていくとは限りません。大企業には入社後のジョブローテーション・システムもあり、異動するたびに学ぶべきことが山のようにあります。資格取得は、そうした日本的組織の中でどうやって自分がキャリアを形成していくかという練習になっているのかもしれません。自分の専門以外のものに興味を持って取り組む柔軟性や、一つの資格を取るために発揮する集中力は、資格取得で得られる能力であるとも言えるでしょう。 資格が就職の時にとても有利になると思っていたり、資格に追われて本来の学部の勉強や学生生活がおろそかになってしまったりするのは本末転倒です。しかし、興味があってチャレンジしてみたいと思う資格があるのであれば頑張ってみても良いと思います。決して資格を過信せず、就職活動で特段有利にならないということを頭に入れて、自分の能力を伸ばす気持ちで取り組んでみるのが良いでしょう。1963年東京都生まれ。東京大学教育学部卒業、東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。お茶の水女子大学文教育学部非常勤講師等を経て、2007年より現職。著書に『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?』(日本図書センター刊)、『キャリア教育のウソ』(筑摩書房刊)、『キャリアデザイン学への招待』(共編著、ナカニシヤ出版刊)など。児美川 孝一郎(こみかわ こういちろう)6

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