IKUEI NEWS vol.77
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多くの大学生が勘違いしている日本の資格について 日本で取得できる資格には、大きく分けて2種類が存在します。一つは業務独占の資格。その資格を保有していないと業務すらできないもので、医師や弁護士などがこれに当たり、職業に直結しています。もう一つが、公的資格や民間資格などの、保有していても必ずしも業務に必要とならない資格。TOEICや秘書検定などがこれに当たります。学生の就職活動において昨今話題になっているのは、後者の資格です。 欧米であれば、「こういう仕事・業務ができる」という証明が資格であり、その能力が評価されて雇ってもらえるので資格には意味があります。しかし、日本の資格は業務に関連しないものも多くあります。さらに雇用の形も、まず人を雇い、その人に色々な仕事をさせて業務に関する能力を付けさせていくので、はじめからその人の能力を見ているわけではありません。雇用がこのような形をしている社会で、しかも業務に不要な資格を保有していても、採用に結び付くとは限りません。 大学生の資格取得の様子を見ていると、その大半が日本の社会における資格というものを、正しく理解していないようにも思えてしまいます。普通は資格というと興味があったり、やりたいことに必要だったりという理由で取りますが、就職氷河期と呼ばれた数年前まで、「資格を取りたいのですが、何を取れば良いですか」と本末転倒な悩みを抱えて私を訪ねてくる学生が後を絶ちませんでした。「就職に向けて資格はないよりもあったほうが良い」、「いくつも持っていると就職に有利らしい」など、世間では「資格と就職」に関するさまざまな言説が飛び交っており、就職に不安を感じる学生たちはそういうものに振り回されていたのです。自信の無い学生が増えたことで資格が注目される では、なぜ学生はこうした言説に流されてしまうのでしょうか。それはやはり、「自信の無さ」の裏返しだと考えられます。平成27年度で、大学への進学率は約54%。高校を卒業した人の半分以上が大学へ進むわけですから、周囲と比べて自分は厳しい試練を乗り越えて入学したという実感も少ないのです。ましてや指定校推薦やAO入試などは、高校時代の成績や、面接・小論文のみで通ることができてしまうので、何かを乗り越えたという感覚は少ないのだろうと思います。 自信が持てないまま大学へ入学し、周囲には自分と同じような能力を持った学生がたくさんいます。その中でも自分にはどんなアドバンテージがあるのかと考えたときに、やはり自信を持ち切れないのでしょう。それならば資格でも取って少しでも有利に、という心理が働くのです。 私が教授を務める法政大学キャリアデザイン学部でも資格取得の支援を行っていますが、一学年のうち、1割程度の人数がこの制度を利用しています。取り扱う資格の中では、ファイナンシャル・プランナーや宅地建物取引士などが、学生に人気の資格です。しかし、この資格を取ったからといって、就職に直接役立てているかというと、聞いている限りではそういった学生は少ないように感じます。それよりも、法政大学 キャリアデザイン学部教授 児美川 孝一郎大学生が資格に挑戦する本当の意義とは5

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