IKUEI NEWS vol.77
28/40

領域を対象に働く臨床心理士は全体の3%程度だといいます。この領域を選んだ理由について、崎山さんはこう語ります。 「心理学には人間が元気に過ごせる知識が蓄積されており、必ず役に立つはずなのに、世間の理解が得られていないように感じています。心理学への理解を得るためにはどの領域が良いか考え、一番働く人の数が多い産業領域に関わろうと思いました。また、元気に頑張っている人の後押しもしたかったので、産業領域ならその機会も多いだろうと思い、この領域を選びました」。 仕事上、自分より年上の役職者、経営者にも、専門家の立場で接する機会が多いため、「年齢差による難しさを日々感じる」と言う崎山さん。仕事において、特に苦労した経験について話してくれました。 「心に関わる仕事ですので、大きく負の感情に流されている事例は本当に大変です。以前、命を絶った人が出てしまった職場へ緊急のカウンセリングをしたことがあります。身近で思いもよらないことが起きると、人間は悲しみや怒り、人それぞれに色々な反応が出てきます。職場という環境では、一個人の問題とも言い切れません。職場全体が心のバランスを取り戻すために、自分は役に立っているのか、とても悩みました。しかし、この経験を乗り越えたことで、仕事に対する覚悟を新たにすることができました」。あくまで「触媒」となることがカウンセラーの理想の姿 人の心という繊細な部分に触れるため、難しさも多分にあるこの仕事。プロの立場でも、相手の負の感情に引きずられてしまいそうになることもあるとか。自分を律し、的確なアドバイスをするためにもカウンセリングでは特に、「俯瞰することを大切にしている」と崎山さんは語ります。 「カウンセラーも人間なので、個人の気持ちが出てしまうことがあります。しかし、それをそのまま相手にぶつけてはプロ失格。カウンセリングではもちろん相手の話に全身を傾けつつ、同時にそれを俯瞰する自分も持つことで、客観的な視点を見失わないように心がけています」。 崎山さんはこの仕事のやりがいについて、 「硬く険しい表情をしていた方がふと本音を出してくれた瞬間や、カウンセリングの後で安心して涙をぽろっと流した瞬間、心の凝り固まった部分をほぐすことができたと実感します。人の役に立てたと思えることがこの仕事のやりがいです」と話します。 崎山さんは続けて、この仕事に対する信念を語ってくれました。 「医師であれば、病気が治ったときに『先生のおかげで助かりました』と言われることもあるかもしれませんが、私はそうは言われたくありません。私とのカウンセリングはあくまできっかけにして、自分自身の足で前に進んで欲しいのです。私は自分を先生だとは思っていませんし、私の顔や私との面談の内容は忘れても構わないと思っています。ただ、カウンセリングに来た方に『あの頃から自分は変わることができた』と思っていただくことが、私としては理想の姿です」。25

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る