ikueinews vol76
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習慣を持ってもらうか」に焦点が当たりはじめ、現在、問いや論理的思考による、より深いリフレクションの促し方が着目されています。 なぜ、経験学習はここまで社会に受け入れられてきたのでしょうか。私は、現代社会における3つの「見えない化」がキーワードだと考えています。 まず現代社会では、問題を解決することよりも問題を発見することが難しく、「問題が見えない化」しています。次に、変化が激しい現代では、過去の経験がそのまま応用できないどころか、足かせにすらなるという、社会の「先が見えない化」。そして、生まれや属性で先の人生が決まっていた時代とは違い、自分のキャリアは自分で開発する必要があるという、「生き方が見えない化」。 こうした視界不良な社会だからこそ、一旦立ち止まってものを考えることが求められ、経験学習が必要とされているのだと思います。 企業と教育機関で協力し メタに上がれる人材を育成する 企業ではさまざまな場面で経験学習が取り入れられています。1つ目は、経験の浅い新入社員の育成。日常業務は忙しくこなしていくけれども、同じミスばかり繰り返すような経験の浅い新入社員に学ばせるために、若いうちから振り返りをする癖をつけていきます。 2つ目は管理職の育成です。一人前に仕事ができるようになってきて、他人を動かす立場になった時にはもちろん指導ができなければなりません。自分のノウハウを言葉にできるように、自分が実務担当として今までやってきたことを振り返り、次に何をするか、というところにつなげていきます。 3つ目は、新規事業の創出です。経験学習を応用し、ここでは自分が今まで仕事で経験から学んでできてしまった固定概念を取り除き、学習棄却して新しいものを生み出していきます。 このように、企業の人材育成では経験学習が広がりを見せています。しかし私は、企業に入る前の学生の時点から、「経験から学ぶスキルや姿勢=メタに上がる癖」を習得させる必要があると感じています。それは、仕事の大規模化や複雑化によって、教育機関で事前に獲得する能力と、仕事をするために必要な能力の差がどんどん大きくなっているからです。 教育機関では昨今カリキュラム革新に尽力していますが、この差を埋めるにはまだ十分ではありません。研修やOJTなどあらゆる人材育成施策を導入し、企業と教育機関がお互いに力を合わせてこの差をどう埋めていくかというのが、今後の課題だと私は思っています。 反知性主義に陥らない 経験学習を 現在の企業内教育を語る上で外せないほどに、経験学習は重要な存在になってきました。一方で、この「経験学習バブル」ともいえる状況には危険性も感じます。教育の言説は揺れる振り子のようなもの。教育の振り子は、現場(経験)と教室(知識)の間を常に揺れ動き、今までもどちらかが重視された様々なブームや転換期がありました。 しかし、この経験学習バブルの中、経験だけを重視しすぎて、知識をないがしろにするようなことがないように気を付けなければなりません。知識の大切さを無視した「反知性主義」な経験学習の姿にしないためにも、これからは教育や人材育成の在り方をしっかりと考えていく必要があります。大学生研究フォーラム 20166

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