ikueinews vol76
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創造的な技術者・研究者を育てる教育―工学部・工学研究科の事例から事例報告①大学、企業からの報告 「経験で終わるな、メタに上がれ!」京都大学大学院 工学研究科 電子工学専攻 准教授 須田 淳 工学者はクリエイターであるべき 京都大学工学部および大学院工学研究科では、「創造的」な技術者・研究者の育成に取り組んでいます。 そもそも、なぜ技術者・研究者が「創造的」である必要があるのでしょうか。大学入試の物理などを考えると、理系の科目は、「物事がきっちり決まっていて、決まった理論で方程式を解いて一つの正解を導き出すものだ」と思われがちですが、それは大きな間違いです。 工学者は、日々実験や試作を繰り返し、良いものを作り上げようとしています。個々の現象には理論・方程式がありますし、同一の実験を厳密に行えば同じ結果が得られます。しかし、現実には多数の現象が複雑に絡み合っており、それにどう取り組むかという点で無限の可能性があり、正解もありません。また、困難な技術的課題の解決には、予想外のアプローチを考案して突破口を見つけ出す「オリジナリティ」が必要です。 一流の技術者・研究者になるためには、独創的なものや正解のないものを追い求めるクリエイターであることが重要なのです。 基礎理論を「体得」し、 物理法則を「感覚化」する 工学におけるメタ認知 工学部に進学した学生たちの中には、高校時代の「試験問題を解くための勉強」に毒されて、大学での勉強も同じように考えてしまう学生が多く存在します。クリエイターになるための、その土台となる基礎理論の勉強なのですから、高校の学びから大学の学びへ、意識の転換をさせなければいけません。私がよく学生に言っていることは、基礎理論を「理解」するだけではなく、「体得」し、出てくる物理や電気の法則を「感覚化」して欲しいということです。こんな話をすると、学生は怪訝な顔をします(笑)。 別に変なことを言っているわけではありません。例えば、キャッチボールを考えてみましょう。投げられたボールの軌道を正確に予測するためには、ニュートンの運動方程式を解く必要があります。しかし、キャッチボールの上手な小学生は方程式なんて知りません。長年の経験に基づいて「この辺りに来るだろう」と予測し、ボールをキャッチします。方程式を解かなくてもボールの落ちる位置を感覚的に予測できているのです。これが物理法則の「感覚化」です。 私の専門とする電子工学は、電気回路や電子大学生研究フォーラム 2016けげん9

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