IKUEI NEWS vol72
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親しき仲にも礼儀あり 突然ですが、以下の5つの項目について、自分にあてはまるものに〇を付けてください。同棲したり、結婚したりしたときのことを想定して答えてみてください。①自分の文具類や書類などをしまっておく家具や引き出しを別々に決める。②自分の衣類などをしまっておくタンス類や引き出しを別々に用意する。③洗面所などに自分の歯ブラシやヘアブラシなどの小物を置く別々の決まった場所を作る。④自分の寝るベッドを別々に用意する。⑤食卓で自分が座る席を決める。 この質問は、なわばりとプライバシーの研究で用いられたものを参考にして作成しました。これらの項目は「なわばりの指標」で、該当項目が多い人ほど「なわばり意識」が強いことになります。 なわばりは動物行動学で発見された現象ですが、人の場合は私物を目印にして自分の占有空間(居場所)を明らかにします。なわばりがあると主体的に安心して生活することができます。 冒頭のテストの結果ですが、夫婦は「結婚をしない同棲カップル」よりなわばり意識が強いことが分かりました。夫婦はよい関係を続けるためになわばりが必要だと考えており、同棲カップルは二人の関係を一時的なものにしておきたいのでなわばり作りを避けていると解釈されています。 「親しき仲にも礼儀あり」(A hedge between keeps friendship green.)と言いますが、垣根(hedge、つまりなわばりの目印)が二人の仲を裂くのではなく、二人の関係を続けるために必要であることが分かります。 お互いのなわばりを認め合い(つまり、相手の自主的な立場や人格を尊重する)、無用ななわばり荒らし(つまり、相手の生活スタイルを混乱させたり、無神経な詮索をしたりする)を避けることで、心地良い男女関係が成立します。 例えば、交際相手の携帯電話を覗くのはなわばり荒らしです。その他、相手の生活圏、交友関係(相互作用のなわばり)、私物などにもなわばり意識があります。こうしたお互いのなわばりを認め合うことが恋愛関係を長続きさせる必要条件になります。ヤマアラシ・ジレンマに学ぶ 哲学者ショーペンハウアーの寓話「ヤマアラシ・ジレンマ」があります。 ある冬の日、ヤマアラシ(体の鋭い棘で敵から身を守ったり、攻撃したりする哺乳動物)のカップルが寒さに震えていました。このカップルが体を寄せ合って暖をとろうとしたところ、接近しすぎて(刺す意図はないのに)お互いのトゲで相手の体を傷つけてしまいました。驚いて離れたところ、今度は離れすぎて寒さに耐えられなくなりました。恋愛は、互いの「なわばり」を認めてこそ成立する寄稿●2渋谷 昌三目白大学 大学院心理学研究科・社会学部 社会情報学科 教授心地よい男女関係には「自分の居場所」が必要なわばりを意識した行動で恋愛を育もう近づきすぎれば傷つけ合い、離れすぎれば孤独感を感じる「ヤマアラシ・ジレンマ」。相手のなわばりを確かめながら、本物の恋愛関係を築いていこう。明日への視点現代若者の恋愛・結婚事情自分を育てる学生生活の過ごし方1715

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