IKUEI NEWS vol72
15/48

1977年、北海道生まれ。北海道教育大学岩見沢校小学校教員養成課程卒業、同大学院教育学研究科修了、筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。心理学博士。和光大学現代人間学部講師を経て現職。専門は青年心理学。大学生ら若者を対象に、友人関係や恋愛の心理について調査研究している。著書に『劣等感の青年心理学的研究』(風間書房)、『思春期における不登校支援の理論と実践-適応支援室「いぐお~る」の挑戦-』(ナカニシヤ出版)、『恋愛心理学特論:恋愛する青年/しない青年の読み解き方』(福村出版、8月発刊予定)。髙坂 康雅(こうさか やすまさ)磨しあうグループの中で、成功し、自己のアイデンティティを確立することは容易ではありません。そのため、より多くのエネルギーが必要となり、恋人を求めるようになるのです。良好なエネルギー自己発電で世代を受継ぐ 青年期が終わってアイデンティティが形成されると、エネルギーを安定的に自己発電できるようになります。その結果、同じようにエネルギーを安定的に自己発電している異性とは、相互に刺激しあう理想的な恋愛関係を築け、結婚しても良好な夫婦関係を築くことができます。夫婦としてお互いを高め合い、その結果生まれる余剰のエネルギーは、出産、育児へと向けられていきます。エネルギーの良好な世代間循環の姿です。 アイデンティティが確立されない状態で出産・育児に臨んだ母親は、育児へのエネルギーが不足し、その結果が虐待やネグレクトのような問題につながる恐れがあるといえます。失恋だってアイデンティティ確立に無駄ではない 青年期の恋愛はアイデンティティ形成に役立つ一方、互いのアイデンティティの不安定さから失恋に終わることが少なくありません。学生の中には、1〜2回失恋を経験した段階で、「別れるかもしれない恋人に時間や労力を使いたくない」と考え、恋愛を避けるようになる人もいます。 ただ、私どもの調査結果では、失恋は一時的にエネルギーを減らすものの、アイデンティティ形成には悪影響を及ぼさないことが明らかになっています。失恋に終わったとしても、恋愛を経験し、恋人からエネルギーを貰って努力した経験は、自己形成に十分に役立っています。また、一人と長く付き合っても、同じ期間に複数の人と付き合っても、累計の期間が同じであれば、アイデンティティ形成への影響が変わらないことも分かっています。 このような結果から、大学生は恋愛した方がいいと私は考えています。卒業して社会に出れば、関わる人は自分と異質なのが当たり前。異質な人間関係を学ぶという意味でも、恋愛の経験は役立ちます。異性と深く関わることで同性間での常識が通用しないこと、異性ならではの考え方や感情があることを学び、理解することができます。これらを含め他者との人間関係構築という大きな観点から、恋愛は自分を大きな成長に繋げてくれると言えます。青年期の恋愛関係と成人期初期の恋愛(夫婦)関係足りない奪い合う足りない〈青年期の恋愛関係〉青年期の恋愛は、互いにアイデンティティ形成が不十分なため、必要なエネルギーを自分で賄うことができず、恋人から奪い合おうとする。〈成人期初期の恋愛(夫婦)関係〉成人期初期では、互いがアイデンティティを形成できているため、自分に必要なエネルギーを自分で賄えるようになり、恋人・配偶者からエネルギーを奪う必要がなくなる。奪い合わない12

元のページ 

page 15

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です