ikuei news_vol74
9/44

 例えば前述の70〜80歳代の筋力レベルになっている学生。このまま衰え続ければ、30歳で寝たきりになってしまうほど危険なレベルです。そのような学生でも、週に1回のフィットネスの授業で体を動かし、受験勉強で崩れた生活習慣を正し、食生活を見直して適切な栄養を摂っていくと、1年間で45歳ぐらいの筋力レベルまで戻ります。もう1年あれば、自分の実年齢まで筋肉レベルを戻すこともできるでしょう。適切な運動・栄養・休養が三拍子揃えば、いくらでも取り返しがきくのが若者の特権です。 運動を始める入口として、一つは、関心のあるスポーツをやってみることでしょう。サークルや部活動に入って、みんなで楽しみながら運動してください。そして、上手くなるために付随してトレーニングを自発的に行う、というのが一番自然な形だと思います。 今まで運動経験があまりない学生にとっては、今までの話がピンとこない人もいると思います。そういう学生は、効率よく体力を高めてくれるフィットネスやトレーニングから始めるのがよいと思います。大学では授業等で取り入れているところも多くあります。授業で週に1回90分だけでも、運動の効果は如実に減るスピードを抑えることで、後年に起きる危険を防げます。また、若くて体が元気に動くうちに習慣化できれば、高齢になって体が動きづらくなってから運動を始めるより、心理的負担が小さくて済みます。 日本は、これからまだまだ高齢者人口が増えていきます。現時点で要介護認定者数は500万人を超えており、このままでは社会が耐えきれません。平均寿命ではなく、健康上の問題がなく日常生活を送れる期間である「健康寿命」を延ばすことに着目すべきです。高齢者でも、元気に自分で自分のことをできるという状況をつくることが、自分自身の幸せのためであり、日本の社会のためにもなるのです。成果が顕著な大学生の身体今から始めても十分に間に合う これまでほとんど運動をしてこなかった学生でも、大学生から運動を始めればどんどん体力がついていきます。大学生の頃というのは、運動の成果が身体に顕著に出やすい時期。今のうちから定期的な運動を始めれば、すぐに自分の年齢にふさわしい体力・筋力レベルを取り戻すことが可能です。表れてくるでしょう。身体を動かす「気持ちよさ」を発見するところから始めよう なかなか踏み出せないという人は、とりあえず体を動かすこと「だけ」から始めてみてください。いきなりフィットネスなどから挑戦しようとするのではなく、例えば10分間のジョギングから始めても良いと思います。まずは自分がつらい、苦しいと思わないレベルで行うことです。競い合うものではなく、自分だけのペースで、自分の体と語り合うようにして運動すると、体がとても気持ち良く感じるはずです。一度気持ち良いと感じることができれば、また時間を見つけて続けていくようになります。さらには、日常生活の中で自分の体に変化を感じ、それを「維持したい」「もっと良くしたい」という気持ちが、定期的な運動のモチベーションにもなるのです。 今後の人生で、皆さんが自分の専門の学問へ進んだり、就職をしたりする時にも、絶対に体力・筋力は欠かせません。これから先の人生を有意義にしていくためにも、若さと時間がある今のうちに運動を習慣化して、健康な体をつくっていきましょう。1955年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。同大学助教授などを経て現職。専門は身体運動科学、筋生理学、トレーニング科学。1981年ボディビルミスター日本優勝・世界選手権第3位など、競技者としても輝かしい実績を誇る。著書に『スロトレ』、『スロトレ完全版』(共著、ともに高橋書店刊)、『石井直方の新・筋肉まるわかり大事典』(ベースボールマガジン社刊)ほか多数。石井 直方(いしい なおかた)6

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 9

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です