ikuei news_vol74
8/44

「運動嫌い」はいないはずが、若い世代に増える運動不足 運動は、人間も含めた全ての動物が生きていくために必要不可欠なものです。動くことで食べ物を集めるなど、「生きること」と「体を動かすこと」は、常に密接な関係にあります。また、動物には体を動かすことでさまざまな刺激を体中に伝え、健康を保つという仕組みがあらかじめ備わっています。 そのため本来、動物が「運動嫌い」というのはありえません。それは人間も同じで、生まれつき「運動嫌い」な人間はいません。しかし、「子どもの頃、ランニングが他の人よりも遅くて引け目を感じた」などの経験から、運動が苦手だという意識が生まれ、それが運動不足に繋がってしまいます。 日本では1980年代から子どもの体力低下が続いています。大学生も同じで、運動不足のまま成長してきてしまっているため、体力がなく筋力が弱い学生が増えています。以前に私の研究室で、新入生の足腰筋力レベルを測定したところ、新入生全体の3%ほどが70〜80歳代の筋力レベルでした。そこまではいかないにしても、運動が必要なレベルの大学生というのは確実に増えてきています。運動は体だけでなく脳にもプラスに働き、日常を好転させる 運動をするとさまざまな良いことがあります。まず、運動で体力がついてくると、生活そのものが変化します。運動による適度な疲れから睡眠をしっかりとるようになり、お腹が空いて栄養をきちんと摂るようになります。すると体の調子が良くなり、元気が出て、外出して人と触れ合うなど、活発な行動をとるようになります。また、体の形においても、美しい見た目や、機能的な体を作ることにつながります。体の内外にさまざまな良い効果が表れるだけでなく、それに伴って日常生活においても良い循環が生まれることが期待できるのです。 また、運動をすると頭が良くなるという話もあります。これは、アメリカで行なわれた動物実験で明らかになったもので、運動によって脳の短期記憶を司る「海馬」で神経細胞の数が増えるのです。最近では、習慣的に運動をしている高齢者は、していない高齢者に比べると、認知症の発症リスクがおよそ3分の1に減るということも分かってきています。体を動かすことが脳の働きに好影響を及ぼすという仕組みが明らかになってきており、大学生にとっては、学習と運動の両立がとても大事なことだと言えます。自分と社会のために運動で健康寿命を延ばす 若いうちから運動習慣を身につけておくことは、これからの人生にも大きく寄与します。30歳以降になると筋力は自然と落ち、普通に生活していても、80歳の足腰の筋力は、30歳と比べおよそ半分。つまり足1本分の筋力がなくなってしまうのです。若いうちから運動を習慣づけ、筋力レベルを上げれば、そもそもの筋肉量が増え、さらに筋肉量が理学博士/東京大学大学院 総合文化研究科教授 石井 直方本質的に、運動が嫌いな人間はいない5

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 8

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です