ikuei news_vol74
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 卒業制作に平面絵画を選んだことは、日本画専攻に在籍する者としてもう一度平面絵画について考える良い機会となった。作品のタイトルを「Untitled」、つまり無題としたのは、特定のイメージを鑑賞者に与えないことで、抽象的な画面から様々なモチーフや見方を探ってほしかったからである。一見すると抽象画のように見えるこの絵は、ディスプレイの上に液体を垂らすことによって屈折し歪んだ画像を、写真に撮り、その写真をキャンバスに絵具で模写したものである。制作では、RGB画像特有の蛍光色をいかに絵具で再現するかに気を配り、「画像らしさ」と「絵画らしさ」のせめぎ合いの中で筆致が抑制・解放されていった。 私たち平成生まれの世代はパソコンや携帯の画面に囲まれた日常を送っており、自然とデジタル空間の狭間に生きている状態である。前者の代表たる液体と、後者の代表たる画像とを重ねあわせた像を描いた今作は、その狭間で揺れ動く私達の心情を代弁しているのかもしれない。「奨学生のページ」は奨学生の活動について報告するページです。今回は2016年3月に芸術系学部を卒業した奨学生4名の卒業制作を紹介します。 アンドロイドやロボットが好きなので、機械と人間に関する考察を音楽に乗せて音声合成技術で音読するという映像作品を制作しました。タイトルは、機械を意味する「マキニカリス」と、実存主義者サルトルの小説「嘔吐」から名付けました。 「機械と人間はどこまで同じで、何が違うのだろうか」という疑問から始まり、「結局同じではないか」「しかし人間が機械のように与えられた役割をこなすことだけを重視するのは、危険ではないか」ということに言及しています。 制作にあたって、サウンドや映像制作などの技術的な面でも苦労はありましたが、一番苦労したのは自分の意見を文章としてまとめることでした。「機械とはなにか」「人間とはなにか」と考えるほどに哲学の領域にまで踏み込んでしまい、もともとの自分の知識や考えだけでは上手く結論づけられなかったので、これをきっかけに哲学を少し勉強しました。 音声合成技術の音読は、ピッチや話の「間」を細かく調整するなどしてより人間の喋りに近く聴こえるようにこだわりました。京都市立芸術大学 美術学部 奥保乃歌マキニカリスは嘔吐する金沢美術工芸大学 美術工芸学部 田中 拓斗Untitledディスプレイに液体を垂らした、模写の元画像。展示風景。ヘッドホンを装着し、箱の中に設置されたスクリーンを覗いて見る。箱の中には、音読される文章と映像が映し出されている。卒業制作展での展示の様子。37

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