ikuei news_vol74
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運動は、脳を活性化しポジティブな気分をつくる 運動によって得られる効果は、筋力アップ、スキル向上、脂肪燃焼などさまざまですが、脳にも好影響があります。脳が指令を出して筋肉を動かすだけでなく、実は、筋肉から全身の臓器へさまざまな感覚情報やホルモン様物質を送り、それらが脳を活性化させることが示唆されています。脳からだけではなく、筋肉からも脳を刺激するような相互関係にあることが次第に明らかになってきました。 また、運動には脳が作る感情を好転させる効果があることも分かっており、私はこれに大きく着目しています。ポジティブな気分でストレスに負けない、理想的な脳の状態を、私は「脳フィットネス」と名付けました。脳フィットネスの状態を目標とし、「気分尺度」という目で見える心理状態の指標をつくり、特許を取得するなどして、運動によって前向きな気分をつくるための研究を重ねています。 ここ20年ほど、「健康ブーム」という言葉とともに、国を挙げてさまざまな形で運動が推奨されてきました。最近ではスポーツジムなどの運動施設も増加しており、運動をしている人は確実に増えてきています。しかしながら、まだ十分に日本人に運動が浸透しているとは言えません。 運動に大切なのは、「楽しい」ということ。身体を動かすことを楽しいと感じられれば、運動が好きになるし、継続することもできます。さらに、「楽しい」と思うということは、気分のポジティブな覚醒度や快適度が上がっているということであり、それらを担う脳部位が活性化します。その中には、認知機能に関係した脳部位も含まれるのです。脳と身体にとって大切な持久力「プチ持久力」を無理せずつけよう 昨年12月に発表した論文では、持久力と脳の「認知機能」が相関する、つまり、持久力が高い人ほど、考える能力や理解する能力が高くなるという研究成果を発表し、ニューヨーク・タイムズにも取りあげられました。認知機能の中でも、特に「実行機能」と呼ばれる機能は、計画実行能力や判断力、さらには興味・関心、意欲にも関わり、生活する上で非常に重要です。持久力が低下すると、この機能も低下し、心臓疾患などの身体の病気に留まらず、うつ病、認知症などの脳の疾患に繋がる可能性が示唆される一方、持久力を高めると認知機能も高まるのです。 持久力の有無は、一分間で体重1キログラムあたりどれだけの酸素を体内に取り込めるか、という「最大酸素摂取量」で評価することができます。例えば超一流のマラソンランナーであれば、70〜80㎖の酸素を取り込むことができます。これが一般人では45〜50㎖、寝たきりの人では30㎖以下まで落ちてしまいます。 持久力は、身体が長時間活動するための、人間の基盤となる能力です。運動をして最低限の持久力をつけることは、脳を活性化し、実行機能を高めることになり、さらには脳や身体に関わるさまざまな病気の予防にも繋がります。自己の能力向上、健康維持のために、持久力は最も重要だと言っても過言ではありません。しかし、日本人は持久力というと、どうしても学校での強制参加のマラソン大会な医学博士/筑波大学 体育系 教授ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)・センター長 征矢 英昭そ  や持久力向上による「脳フィットネス」のススメ7

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