IKUEI NEWS vol.73
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書館業務は従来同様ですが、その比重は電子化がさらに進展すれば必ず小さくなります。新たに加わる業務として、例えば、大学で行われた研究成果の公開や研究データの管理に関わる研究支援業務や、学生の学習支援業務などの比率が増えていくと考えています。 さまざまな役割を大学図書館員が同時に担うようになるにあたってネックとなるのが、人材の育成です。従来の司書課程は、これからの大学図書館が必要とする人材の育成には不十分です。大学や大学図書館の新しい動きに対応していくためには、新しい教育課程を作ることも重要ですし、すでに大学図書館員として活躍している皆さんに、新しいスキルを身につけてもらう機会を提供する必要があります。「心から学びたいこと」を学べる学生を育てるために 学生には、学習のプロセスを学ぶ場として、大学図書館に足を運んでほしいと思っています。主体的な学びの場として、ディスカッションを通じて意見交換したり、資料をじっくり読んだりすることが、思考を深めていく上で必要なプロセスだからです。加えて、困ったときにサポートしる潜在的な力を持っています。 しかし、学習支援は大学図書館員だけでなく、他の職員や教員や学生も巻き込んだ、「学習支援チーム」として機能する方が望ましいでしょう。常に職員が最前線にいる必要はありませんが、学生だけでは対応しきれない時のためにスタンバイしていることが重要です。広く教育、学習ということを考えれば、誰か一人がすべてに対応するのではなく、教員・職員・学生を含む多様な人材のチームとして、さまざまな学生のニーズに上手く対応できるようになればいいと思います。 加えて、チームでありながら、個人として認識されることも重要です。アメリカの大学図書館員は、学生に接して自分の名前を覚えてもらうようにしています。「何か困ったらあの人に」という感覚を学生に持ってもらうのです。匿名の漠然とした「図書館の人」ではコミュニケーションは上手くいきません。多様化する大学図書館員の未来 以上のように、学習支援者としての大学図書館員の役割は、今後ますます重要になっていきます。情報を収集し、組織化・保存して提供する基本的な図てくれる人材がいることも重要です。 これまで述べてきた考えを具体的に展開してきたのが、本学が2011年に設立した、図書館を中心とした総合的な学習支援環境である「アカデミック・リンク」です。図書館がこれまで収集してきた資料などの「コンテンツ」、ラーニング・コモンズを含む「学習の場」、そして学習支援に関わる教員・大学図書館員・学生による「人的支援」が集まり、相互に作用しながら、学生が「本当に学びたいこと」に気づけるような仕掛け作りを行なっています。 いま大学教育の中で、「レイト・スペシャライゼーション」が一つの流れになっているように思います。これは入学の時点で専攻を決めず、数多くの基礎科目を学んでから、自分が本当にやりたい専門領域を絞り込む学び方です。これはアカデミック・リンクの基本理念と一致する方向です。その時に学生のサポーターとなるのが、教育・学修支援専門職なのです。 学生が心から学びたいことを学べる大学を目指す中で、その中核的な役割を果たす大学図書館を牽引する人材として、大学図書館員が大きな役割を担うことに大きな期待を抱いています。1961年、福井県生まれ。1987年慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程(図書館・情報学専攻)修了。04年愛知淑徳大学大学院文学研究科博士後期課程(図書館情報学専攻)単位取得退学。修士課程修了後、東京大学附属図書館、ユネスコアジア太平洋地域中央事務所(在バンコク)にて勤務。静岡県立大学短期大学部助教授、千葉大学文学部准教授を経て、08年同教授。現在、副学長・附属図書館長およびアカデミック・リンク・センター長を兼務。著書に『図書館サービス論』(共著、東京書籍刊)、『変わりゆく大学図書館』(共編著、勁草書房刊)などがある。竹内 比呂也(たけうち ひろや)6

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