IKUEI NEWS vol.73
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あらゆる「知」を自在に操り、自ら学ぶ力を身につける 紀元前から知の集積場として、人類の知的な営みを保存し続けてきた図書館。日本に近代的な欧米の図書館制度を紹介したのは、幕末に渡欧し、大英博物館図書室などを視察した福沢諭吉だと言われています。そして、日本の大学図書館は、1877年の旧東京大学の創設と同時に、法・理・文の三学部と医学部に付設される形で始まりました。その後、終戦を経て、新制大学発足後の十数年間は、各大学図書館が独自にさまざまなサービスを提供していましたが、1965年、当時の文部省大学学術局が「情報図書館課」を設置したことをきっかけに、大学図書館に関する施策の枠組みが作られるようになりました。 以降、厳粛な「本の倉庫」だった大学図書館は、2000年に国際基督教大学がラーニング・コモンズを図書館に導入したことを皮切りに、学習支援の場として注目されるようになりました。現在も多数の大学が新たな学びの場作りのため、図書館の新設や増改築を行っています。日本最大の蔵書数を誇る東京大学図書館も、教育と研究のための新たな拠点となる新図書館計画を進めており、2019年ごろの完成を目指しています。大学進学を目指す高校生たちへ、大学の魅力としてPRされるほどになった大学図書館は、綺麗で明るい学びの場として、多くの学生に利用されています。 大学図書館の変化に合わせ、大学図書館職員にも変化が現れています。資料の収集、整理、保存、貸出などの基本的な業務に加え、学術的な文章の書き方を指導するアカデミック・ライティング教育や、必要な情報を収集し、活用するための情報リテラシー教育などを、教員や学生の力も借りて行っています。さらに、編集部インタビューでご登場いただいた千葉大学の竹内比呂也副学長は、これからの大学図書館員は、学生の学習全体をサポートする役割を担うようになっていくと述べています(5〜6ページ参照)。 一方、図書館が元来持つ知の集積場としての役割は、インターネットとウェブ検索に奪われつつあります。幼いころからインターネットに触れてきた世代の学生たちは、「わざわざ図書館を訪れなくても、インターネットで検索すればよい」と考えてしまうことが多く、レポートや課題などをネット情報だけで済ませてしまうこともあります。とはいえ、自己流でインターネットだけを使用して得られる情報には、量・質ともに限界があります。そこで、図書館が持つ紙の書籍と電子資料、そしてインターネットの活用も含めた情報探索に関する授業が、多くの大学で行われています。 では、学生と大学図書館にまつわる現在のトレンドをデータで見てみましょう。ここでは、2つの大学図書館にまつわる調査に着目します。 1つ目は、日本図書館協会の「日本の図書館統計」です。同統計では、公共図書館と大学図書館を区別して、各図書館の職員数や蔵書冊数、貸出冊数などに関する総合的な調査を行なっています。この調査では、分館も一つの独立した図書館とカウントされるので、大学図書館についても、複数のキャンパスに図書館があれば、別のものとして数えられます。今回は、大学図書館に関する過去5年分の調査を使用します。 まず、学生向けの貸出冊数の総数は2010年度から2014年度までの過去5年間、2430〜2500万冊の間で、大きな増減なく推移しています。一方、変化が顕著なのが、大学生は読書しない?※ラーニング・コモンズ:複数の学生が集まり、電子情報や印刷物など様々な情報資源を用いて議論や学習を行うためのスペースで、図書館等に設置される。本の倉庫から、情報が集まる学びの場へ2

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