IKUEI NEWS vol.73
21/40

「クロスカル」な図書館が学生の学びをより豊かにする 現館長の渡部幹雄さんは、初めて和歌山大学附属図書館を訪れたとき「仰天した」といいます。和歌山大学が図書館改革にあたって副館長として招聘した渡部さんは、大分県緒方町立図書館、長崎県森山町立図書館、滋賀県愛知川町立図書館など、多くの公立図書館の改革に携わってきました。 「まず驚いたのは資料が〝研究用〞と〝学習用〞という購入費用別に分類されていたことです。せっかくある本がどこにあるのか分かりにくく、廊下には箱に入れられて山積みになっている有様。まったく利用者のことを考えていないことに失望しました」。 渡部館長は、ガイダンスと図書館関連の講義を学生向けに行なうという基本的なことから始め、建物の改装、資料の再配置などの改革に次々と着手。改革のテーマには、教養・文化・国際・地域資源・人材などの「ローカル&カルチャー」が、「交流(クロス)」して新しい価値を創造できる場所にしようという意味から、「クロスカル」という造語を使っています。 この考えを具現化したのが、各フロアを相互に関連づけたこと。1階のラーニング・コモンズで自由に話しながら学びを広げ、本が揃う2階に上がって知を深識改革が、「特に苦労した」と渡部館長は語ります。 「職員全員が、パーツごとではなく全体像を捉えて働く。例えば各フロアでチームを組むフロア分担制度を作ったり、前日の利用者数を職員全員にメールしたり、全体の動きを共有化することに力を入れました」。 はじめはやはり、職員に「戸惑いがあった」と吉田係長。しかし、参加するうちに、少しずつ意識が変化するのを感じたそうです。 「改革に参加しているという実感がやる気に繋がったようです。以前は館長がほぼ一人で引っ張っていたのを、今では全員で後押ししています」。 ここ数年で、利用者数・貸出冊数が増え、図書館で将来働きたいという学生や、実際に図書館で働く卒業生も出てきました。渡部館長は、今後の目標についてこう語ります。 「世界的には、図書館は本の貸出だけでなく、あらゆる情報を利用者に提供する施設と見なされています。これからは図書館職員も教育に関わりを持ち、本来の図書館がもつ可能性・重要性を次世代に伝えられる人材を育成していきます。図書館職員や教員として活躍する人材を地域や世界に輩出していくことで、図書館だけでなく、地域と本学全体の活性化に繋げていきたいと思っています」。める。3階の〝貸し研究室〞のような個室でさらに積極的に学ぶ、という学生の利用段階にあわせて回遊を促す「知のスパイラル」が考慮されています。 附属図書館学術情報課情報サービス係長の吉田弥生さんは、新しくなった図書館で学生が積極的に活動する姿を見て、「その可能性を実感した」と言います。 「学生は環境さえ用意すれば私たちが想像している以上の活動をしてくれることがわかりました。例えばシステム工学部の学生がゲームの開発をしていたり、経済学部の学生が市場調査の打合せに利用したりするなど、話し合いながら学ぶ図書館を使いこなしています」。 職員と学生の意識転換に成功今後は人材育成で地域・大学への貢献を 今までの図書館職員は、いわば「倉庫の番人」で積極的に動くことはありませんでした。その考えを変えるための意本の順番は分かりづらく、箱詰めされた本が山積み。これが改革前の和歌山大学附属図書館でした。大学改革の重点目標の一つとして、「学生のため」を掲げて取り組んだ図書館改革。2011年からの短期間で山積した問題を一掃し、利用者数・貸出冊数ともに1・5倍を実現、さらに和歌山大学の活性化を後押ししています。和歌山大学附属図書館図書館の可能性を広げた「クロスカル」な場作りを実現情報機器を用いたグループ学習が可能な「メディアルーム」。 自由な話し合いが可能な、1階のラーニング・コモンズ。左から吉田弥生係長、渡部幹雄館長。大学図書館に行ってみよう事例取材18

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 21

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です