IKUEI NEWS vol.73
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や養殖協会ら業界団体の情報は見ましたか?総務省統計局の《家計調査》なら、消費者側の蒲焼の購入金額も日別に推移がわかりますよ」「そんな資料もあるのですか!」「さてその指標で、最終的に何を展開したいのですか?」 質問をするとレファレンス担当者は、どのように探索を進め、既に何を読んだのか、資料を使って最終的に何をしたいのかを問うでしょう。残念ですが、簡潔に即答してくれる利用者は極めて稀です。おかしな話ですが、自分が何をしたくて、どんな資料を求めているのか、利用者本人にも明示化は難しいといえます。 レファレンスの場では、質問した利用者は担当者とのやり取りの中で、さまざまな振り返りに導かれ、徐々に頭が整理されてきます。そして、課題に対する「認識の網の目」がみるみる更新され、薄皮を剥ぐように問題の輪郭が明確になってきます。他者の視点を通すことで、曖昧な問題意識が揺さぶられ、対象への認識が磨かれるわけです。レファレンス担当者を、自らの「わからなさ」を映し出す〝鏡〞にしてしまうことが重要です。 よく自分の専門外の人に相談しても無意味、とけなす声も聴きますが、それは誤解です。日本のスポーツ法学専門の先生が米国で研究中、大学図書館で経験した話です。相談相手は日本の法律については全く門外漢。何を論文に書きたいか一生懸命説明するうちに、逆に質問を返され、使う資料のお粗末さ、論文構成案の粗さに気がついたと言います。レファレンス・サービスにより、自身の飛躍した論理、説明の不足を省察する機会を得られたわけですね。レファレンスカウンターへ急げ! 情報や資料をもとに、仲間たちとグループで討論しながら、指導教員を言い負かしたり、何処にこんな珍しい資料があったんだ! と驚かせたりしたい。それには、レファレンス・サービスを活用して、「的確な」情報を集めてうまく関連づけ、ああでもない、こうでもないと論理の枠組みづくりに格闘し、新たな知識の創造を行う必要があります。そのプロセスにおいて、利用者の「知的武装」の手伝いまでしてくれるのが、レファレンス・サービスなのです。 公共図書館も含めて、国内の図書館で利用者からどのような質問があり、どう回答したかを蓄積した国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」が公開されていますので、一度参照してみてください(http://crd.ndl.go.jp/reference/)。たとえばSTAP細胞の論文に関する質問も、学生さんはしているようですね。質問・回答の記録を見ると、すぐにでもカウンターに行きたくなりますよ。 最後に、留意すべきは、日本の学生はレファレンス担当者の回答・助言をそのまま鵜呑みにしがちだという点です。米国留学から帰国した聡明な学生にたずねたことがあります。「レファレンス・サービスの担当者によって、回答や意見がバラバラで混乱しなかった?」「担当者により、意見や回答は異なっていました。ですが、学ぶというのは、色々な意見を聞き、物事の多様性を知ることなので全く気になりません。最終決断をするのは自分ですから」。グローバル化時代にはこの姿勢が大切なのです。これを、最後に伝えておきたいと思います。井上 真琴(いのうえ まこと)1962年、京都市生まれ。同志社大学文学部卒。同志社大学職員として図書館でレファレンス・サービス、選書業務を担当。著書に、学生の情報リテラシー向上を目的に執筆した『図書館に訊け!』(私立大学図書館協会賞・筑摩書房)がある。同大学社会学部嘱託講師(学術情報利用教育論)を務め、現在はラーニング・コモンズの設計・運営に携っている。12

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