IKUEI NEWS vol.73
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知られざる、大学図書館の“MOTTAINAI”サービス ヒト・モノ・カネを存分につぎ込みながら、利用者に認知されていない〝MOTTAINAI〞サービス。それが、大学図書館のレファレンス・サービスです。基本的には、利用者が「調べもの」をする際、図書館のスタッフが目的に合った資料や情報を紹介して、調査・研究の展開を支援する人的サービスと言えるでしょう。具体例を挙げた方が分かりやすいですね。 村上春樹・佐々木マキ『ふしぎな図書館』(講談社)を例にしましょうか。この物語では、主人公の「僕」が市立図書館を訪ね、次のような質問を図書館の老人に投げかけます。「オスマントルコ帝国の税金のあつめ方について知りたいんです」と僕は言った。(中略)なにかわからないことがあったら、すぐに図書館に行って調べるようにと、小さいころからしつけられてきたのだ。 よい躾を受けた主人公ですね。大学図書館のレファレンス・サービス担当者なら、こう対応するでしょう。「まず、オスマン帝国の概要は理解できていますか。『世界大百科事典』等で基礎事項の確認を済ませてください」「総括的な研究のまとめなら、〝講座〞類、『岩波講座世界歴史』の論文や別巻索引から研究のおさらいを始められます」「『史学雑誌』の毎年五月の「回顧と展望」号にはイスラム史文献のレヴューもあり、参照すると、ほら、徴税請負人制度の論文が出てきますね。」「最近のものは、ネットで公開されている日本中東学会・中東研究文献データベースを検索しましょう。『歳入の増加と支配の正当性――オスマン帝国における徴税・財務制度(1560―1660)』という本や「後期オスマン帝国の徴税請負制に関する若干の考察」等の学術論文がありますね」。 いきなりインターネット検索エンジンで探せば、匿名人物が出所不明確な引用情報でオスマン帝国を語っている類の情報ばかりでしょう。それらは脈絡なく、〝断片情報〞としてネット上に佇んでいるだけです。情報探索は、「信頼できる確実な情報から入り」、「評価の高い情報を文脈化する」のが鉄則。同じインターネットを利用しても、日本中東学会のデータベースから初動調査を誘導してくれるのは、実にありがたいサービスではありませんか。レファレンス・サービスを利用する効用は対話から生じる思考の「交通整理」 レファレンス・サービスの効用は、知らない資料・情報の紹介にとどまりません。このサービスの真骨頂は、担当者に質問することで自らが抱えている課題――探索における思考の道筋、焦点の絞り方――について、頭の交通整理ができることにあります。 「土用の丑の日などで、どれだけウナギが売れるのか市場調査したい。よい指標はないでしょうか」「うなぎはほとんど養殖でしょう? 日本養殖新聞レファレンス・サービスを利用し、より深い調査をしよう寄稿●2井上 真琴同志社大学 教育支援機構 学習支援・教育開発センター 事務長調査・研究を始めたら、まずレファレンスカウンターへ行こうレファレンスは、ただ図書館スタッフが資料や情報を紹介するためだけのサービスではありません。学習者とのやり取りを通じて、調査・研究の展開を支援し、「知的武装」の手助けまでを行います。明日への視点変化する大学図書館をもっと活用する自分を育てる学生生活の過ごし方15もったいない11

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