IKUEI NEWS vol72
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チュートリアルセッション 2015生涯を通じた学習への積極性を、大学教育の中で培う東京大学 大学総合教育研究センター 特任助教  中澤 明子学習者にとって望ましい学びへの姿勢を実現するための学問 エンゲージメント学は、学習者が「もっと学習したい!」というモチベーションや「学習が楽しくてたまらない!」という感情を持ちながら、積極的に学習に参加できる授業や学習の実現を目指します。 これまでも、学習へのモチベーションやポジティブな感情、学習への参加について研究がなされてきましたが、それぞれの要素を複合的に扱う研究は、必ずしも多いわけではありません。エンゲージメント学は、学習への参加などの行動面、学習へのモチベーションや学習方略(※)といった認知面、学習の楽しさや幸せといった感情面について、関連やバランスを考えつつ、それぞれにおいて学習者のポジティブな反応を得る方法を考えようという分野です。エンゲージメントとは、学校や学習にエンゲージメント学対する学習者の行動、認知、感情の状態を指します。その中でも望ましい状態、つまり活動や学習に熱中したり、意欲的に課題に取り組んだり、学習内容に高い興味関心を持ったりする学習者の状態を実現するために何ができるのかを、エンゲージメント学では考えます。また、まずは授業や教室という小さい範囲でその方法を考えることを目標とします。大学でのエンゲージメントの応用とその課題 大学におけるエンゲージメントの重要性については、様々なところで言及されてきました。エンゲージメントの調査によって、大学が十分な教育プログラムなどを提供しているか、学生が学習に十分な時間をかけて努力しているかが確認され、大学の授業改善や教育プログラムの策定に役立てられてきました。 一方で、そうした意味合いでのエンゲージメントは、大学や大学での教育・学習活動に関するものであり、大学卒業後のことや、学生個人には、あまり触れられていないように思います。 大学卒業後も生涯学び続ける姿勢をつくる 学生は、大学を卒業し、就職してからも学び続けます。また、学び続けることが求められる社会になっています。こうした状況は、エンゲージメントについて考えるきっかけになり得ます。学び続けるためには、学習の楽しさやモチベーション、学習への積極的参加という学生時代の経験が重要になると考えられます。大学による教育プログラムの提供や、学生が学習にかけた時間なども勿論重要です。さらに、学生がどのように学習に取り組み、どのように感じていたのかを考えることで、生涯学び続ける学生の養成へとつなげることができるのではないでしょうか。私は、エンゲージメントの活用で、大学での教育活動や学習の充実を図り、その後に続く社会での活動や学習における積極性を育てることができると考えています。 今後は、学習者が積極的に学習に参加できる授業や学習に関連する研究知見等を、エンゲージメントの観点から再構成していきます。そして、それを授業で活用できる形で提供することを考えています。最終的には、学生の生活や人生に寄与するものへと発展させられれば、言うことなしです。※学習方略:学習効果を高めるための指導者による意識的な工夫のこと。2028

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