IKUEI NEWS vol72
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チュートリアルセッション 2015ファシリテーション学参加型学習における学びを促進する「場づくりの技法」中野 民夫有意義な学習の「場」をつくるファシリテーション 「ファシリテーション」とは、英語の〝facilitate〞(促進する、〈事を〉容易にする)の名詞形で、人が集まって一緒に何かを学んだり創ったりするとき、そのプロセスを促進し容易にする「参加型の場づくりの技法」である。この役割を担う人を、「ファシリテーター」と呼ぶ。ファシリテーターは、お互いに違いを認めて生かし合えるよう、参加者同士の対話を重視し、段階を追ったプログラムをデザインし、全体が意義深い場になるように調えて進行していく。 日本では2003年に関連書籍が数冊出版されて以降、会議、研修など学びの場、参加体験型ワークショップ、企画づくりやプロジェクト運営、まちづくりや組織活性化など、分野を超えて様々な現場に応用され、ファシリテーションの概念が急速に広まってきた。現場での実践が先行してきたので、まだ「学」にはなっていない。ファシリテーションが能動的な学びをより充実させる ファシリテーションが求められる理由は、社会の様々な課題に対して簡単な正解はなく、関係者が集い合い、問い合い、学び合い、解決策を探って行動し、励まし合っていくことが求められているからだろう。誰か一人の専門家にゆだねるのではなく、それぞれが感じていることや考えていることを持ち寄り、安心して話せる雰囲気の中で率直に話し合い、相互作用の中で、共に道を見つけ未来を切り拓くことが必要だし、その方が元気も出るし長続きする。 大学の授業への応用はまだ始まったばかりだが、大きな可能性を秘めている。先生の話を聞く受動的な学びから能動的な学びが求められるため、現在アクティブラーニングが話題になっている。それを適切にサポートするのがファシリテーションであり、アクティブラーニングを実りあるものにするためにも欠かせない。人が集う場を物理的にも心理的にも調え、グループのサイズを分け、適切な問いを出すなどのスキルを活用し、学生の参加や対話を促し、教えられるよりも学び合う中で成長していくことを促す。対話の中で生身のコミュニケーション力がつき、相互に刺激し合うなかで学習意欲が高まり、自分から動いていく主体性も育まれる。何よりも学ぶことが楽しくなる。 大学教育の場でさらなるファシリテーションの展開を 知識を得るだけならインターネットなどでできる時代に、大学にわざわざ人が集まる意義は、人と人が対話し学び合うことにあるだろう。しかし、大学教員は専門分野には詳しくても、学生の立場に立った学習手法やファシリテーションなど参加型の場づくりの技法については知見が乏しい。今後、教員がファシリテーター型の先生を目指すことはもちろん、外部からのファシリテーターが教員と学生の間に入って学びを促進する役を担うなど、様々な展開が求められる。「教える」より「学び合う」場を創るファシリテーション東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 教授(2016年4月予定)2026

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