IKUEI NEWS vol72
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チュートリアルセッション 2015事前学習をベースに、学習者の学びの格差を解消する「反転授業」 反転授業は、説明中心の講義などを動画化し、事前学習として学習者に視聴を促すことを前提に、対面授業では受講者がより主体的に学ぶ演習やプロジェクト型学習を行う授業形態全般を指します。 反転授業はICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)と深く結びついていることから、なにやら近未来的な教育のようにマスコミに取り上げられたりもしますが、実はそうではありません。全ての教員が悩まされる、「目の前の学習者の学びの格差をどのように解消していくのか」という課題に対応するための、日々の試行錯誤の延長線上にあるのです。反転授業が草の根で広まった理由はまさにそこにあり、今現在でも色々な反転授業の形が多くの教員によって試行されています。特に日本では大学教育で実践されている事例が多くあります。その理由としては、eラーニングやブレンド型授業(※)などの基盤となるLMS(Learning Management System:学習管理システム)の導入が進み、学生も手軽な端末としてスマートフォンを所持していることが挙げられます。学生のニーズにマッチし、いつでもどこでも学生の都合で授業をスマートフォンに呼び出すことが可能となり、高いと言われている事前学習のハードルを下げるのに一役買っています。また、反転授業の効果として、学習者の理解が格段に深まった事例がいくつか報告されており、教員のニーズにもマッチしています。従来の受動的な学びから主体的な学びへの転換を促進する 実は、学習者の理解が深まった理由にこそ、反転授業の効果の要点があります。従来の授業デザインは〈講義+宿題〉といったいわゆる〈教えてから学ぶ〉というプロセスを基盤にしています。しかしこれが習慣になってしまうと、学生はいわゆる〈教えてくれないと学べない〉状況に陥ります。これではいつまでたっても主体的な学びの姿勢は生まれません。反転授業は、まず事前学習で学生が自分なりの〈わかったつもり〉をつくり、対面授業でのアクティブラーニングにおいて個々の〈わかったつもり〉のバリエーションを吟味したり検討したりする中で、新たな〈わかった〉を構築することを促す授業デザインです。このように「教授」から「学習」へのパラダイム転換を促進することこそが、反転授業の一番大きな効果であると私は考えています。大学教育の目的は「理解する楽しみ」を教えること そもそも全入時代を迎えた大学では、様々な目的を持つ学生が集まってくることが前提です。そして授業外では、部活・サークルやアルバイト等に多くの時間が取られる中、一番大事な知識の定着や活用に割く時間をどれだけ確保できるのかという疑問があります。世の中のオープンエデュケーションが促進することで、学びたいと思えばいつでもどこでも学べる時代が到来し、教育の格差がどんどん小さくなっていくにも関わらず、目の前にいる学生の学びの格差はやる気や目的の喪失によって広がるばかりです。このような状況を嘆く教員は多いですが、私個人はそれほど悲観していません。これからは取っ掛りはどうであれ、〈わかったらおもしろい〉への道筋をどのように示していくかが、大学の教育力だと考えるべきです。※ブレンド型授業:対面式の教室での学習に、eラーニングを組み合わせた授業形態。〈教えてから学ぶ〉を転換し、主体的な学習者を育む学習法反転授業学関西大学 教育推進部 准教授  森 朋子2024

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