IKUEI NEWS vol72
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日本の新卒採用が抱える3つの課題 「採用学」とは、経営学の観点から採用・就職を研究する学問です。今日は私が専門とする採用学の立場から、日本の新卒採用が抱える3つの課題について考えます。 まずは、1つ目の課題「期待のマッチング」。大企業を筆頭に、たくさんの学生のエントリーに期待している企業は、説明会や面接で自社のポジティブな面を学生に強調しがちです。その結果、入社後に、学生の企業への期待と実態に違いが生じ、ミスマッチを起こすというものです。 2つ目の課題は、「能力のマッチング」。経団連の調査によれば、企業が学生に求めている能力の上位は、コミュニケーション能力、主体性、チャレンジ精神などで、ここ10年間変わっていません。しかしそれらの定義は、企業ごと、さらには面接官ごとに変わるほど曖昧で、正当に評価されているとは考えられません。 そして、3つ目の課題が、「採用活動の過熱化」です。各企業が学生に求めている能力が共通であり、一方では曖昧なまま、そのような能力を持っているであろう学生に内定が集中します。他企業に学生を奪われないよう、企業はより多くの時間と費用を獲得のために費やします。その結果、過熱化をさらに推し進めてしまうのです。採用は優秀な学生を「創り出す」行為である ある基準で人を評価することは、基準に当てはまる人は優秀、そうでない人は優秀でないと規定することにほかなりません。いまの日本の新卒採用では、コミュニケーション能力に代表されるスキルを持った一部の学生と、そうでない学生を企業が優秀かそうでないか、よってたかって決めつけているともいえます。 そのような状況が、2016年入社の新卒採用活動の後ろ倒しによって、少しずつ変わってきています(図)。学生と企業の出会いが遅くなり、相互理解にかけられる時間が減ったことによって、新たな採用のスタイルで学生を獲得しようとする企業が現れてきました。今までどおり就活ナビサイトを利用するルートではなく、採用2020:採用学の視点から見えてくるトレンド大学生研究フォーラム 2015揺れる社会への入口ピースセッション2-2横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授服部 泰宏色々な手段で学生と接触し、しっかりと能力を見極める自社なりの採用基準を作り、さまざまなタイプの「優秀な学生」を採用するようになってきています。この流れが、これからの数年でより加速すると私は考えています。(図)2016年新卒採用(16年卒採用)における変化15年卒まで3年生の12月4年生の4月10カ月間 広報解禁~選考解禁4カ月選抜~内定解禁6カ月4年生の3月4年生の8月(  )(  )7カ月間 広報解禁~選考解禁5カ月選抜~内定解禁2カ月16年卒採用広報の開始選抜の開始広報解禁~内定解禁の期間3カ月の後ろ倒し4カ月の後ろ倒し企業が求職者と関われる期間❶ 見えざる競争の激化❷ 見える競争の激化優秀な学生を採りたい企業は、就活解禁前から直接学生と接触し、水面下で採用活動を進める。就活期間の短縮により、熾烈なエントリー数競争が起こり、インターンシップが増加する。(    )ファシリテータ 中原 淳15

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