IKUEI NEWS vol72
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平山先生に質問です。FSP講座は、理系の基礎研究のような、社会との繋がりが直接見えにくい分野でも実践することはできるのでしょうか。平山 すでに理系の大学で必修科目として取り入れられている実績があります。同じ課題であっても、文系と理系、それぞれ異なる切り口から取り組むことが可能です。例えば、ある化粧品メーカーの商品について、「売り上げを1位にせよ」という課題では、経営学部の学生はまずマーケティング戦略を考えます。一方、理系学部の学生は、容器の形状を変えることや、中の成分を変えて消費者ニーズに合わせることを考えます。このように、学生は課題に対して、自分の専門を活かす形でそれぞれの学部系統に合った解決策を見出していきます。大学生研究フォーラム 2015自身の体験を言語化し、社会の問題と結びつける 早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターでは、社会に貢献する人材を育成することを目的に、学生のボランティア活動をサポートしています。その中で、ボランティアに参加した学生たちの多くが、自身の体験を振り返らず、次の学びに繋げていないことに問題を感じました。 そこで、自分の体験をしっかりと振り返り、自分の言葉で語る「体験の言語化」という科目を開発しました。この科目の目標は、「自己の体験」と「社会の問題」を結びつけることで問題意識を芽生えさせ、最終的に自分も社会の一部であるという「当事者意識」を持たせることです。その結果、主体的に生き、学ぶことへと繋がっていくことが期待されます。 全8回の授業の大きな流れは、前半で自分の中で心に引っかかっている体験を一つ取り上げ、グループワークやロールプレイを通じて掘り下げます。後半では、マッピングを通じて自己の体験と社会の課題を繋げます。そして最後に、パワーポイントや資料を使わない「語り」という形で発表します。発表形式を「語り」にした理由としては、現代の若者は体験を振り返る際に動画や写真に頼りがちで、自分の言葉で語れないことが多く見られるからです。これは新たな社会の問題であると考えます。ネガティブな体験から社会の課題を見出し問題意識を持つ 「体験の言語化」の特色は、まず、悲しかったことや苛立ちを覚えたことなど、ネガティブな体験を引き出させることです。ネガティブな体験にこそ、社会の課題は隠れています。また、授業の中で教員はヒントを出すに留め、学生を支援する存在であることも大切です。学生が自分で言葉を生み出すことが、「体験の言語化」においては重要です。 そして更なる特色が、三段階の構成を取り入れることで毎回の授業でも「体験の言語化」を試みていることです(図)。まずは一人で考え、その後、グループディスカッションをします。これにより、自分の考えを相手に伝える練習をすると同時に、それに対する異なる視点からの意見を聞くことができます。そして最後は代表者が全体科目「体験の言語化」の開発早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター准教授岩井 雪乃に発表し、全体で共有することで多角的な視点を獲得し、社会の課題をより見つけやすくなります。 この授業を受けた学生の多くは、「もっと色々なことを学びたい」と主体的に学びを展開していきます。開発途中のため実証的なデータは不足していますが、今後は学生の追跡データを取り、改善に努めていきたいと思います。答応質疑ピースセッション1-1Q(図) 多様な視点を獲得するための三段階の構成※TA:ティーチング・アシスタント。自分と異なる視点から意見をもらい、発表への自信をつける教員からのコメントでさらに多くの視点を獲得する自分の感情・思考を振り返る2-3人のグループワーク全体発表個人作業TA教員教員※TA10

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