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-----世界及び日本の教育の流れはどう変化しているのでしょうか。  21 世紀に入り、世界の高等教育の流れは教養教育重視へ向かっています。10 年ほど前にアメリカにおける高等教育の方向性を定めたグレイター・エクスペクテイションズ(大いなる期待)という報告書が発表されました。そこで強調されていたのが「リベラル・エデュケーション」、すなわちリベラルアーツ(教養教育)的な考え方が21世紀の教育の潮流になるというものでした。 私は 20 世紀までの教育というのは〝人工植林型〞の教育であったと形容しています。同じ考え方の者が集まり、同じような教育を受け、同じような人材を作り出す。これは20世紀までの産業社会が必要とする人材にはマッチしていました。しかし、多様な人材が必要される 21世紀においては、〝人工植林型〞ではなく〝雑木林型〞の教育が必要です。雑木林というのは、異なる種の植物が混在し、その一本一本が太陽を求めて上へ伸びていく。雑然としているけれど、森の中ではお互いが切磋琢磨して、一人一人が個性的に成長する。活気があり、四季折々に様子が変わっていくという、多様性がある教育。それが教養教育なのです。 日本の高等教育界では、2008年の文部科学省中央教育審議会での答申を受け、学部横断型の教育で総合的に知識や汎用的技能を育てる「学士課程教育」の導入が進められました。そして、各学部に点在する科目を、難易度や位置づけが分かるように体系的にナンバリングする「科目番号制」が、その流れを後押ししています。日本の大学は、かつての専門学部制から、教養教育へと少しずつ移行しているのです。しかし、すべての大学を教養教育系の大学にする必要はないと私は考えています。アメリカでは総合大学と教養教育系の大学の共存ができています。アメリカには教養教育系の大学が600ほどありますが、小規模で、大学での4年間は専門化せずに学部教育に集中しています。卒業した学生は大学院に行き、初めて専門の学問を学ぶのです。しかし、日本の大学教育の95%以上は専門教育で、教養教育系の大学は数えるほどしかありません。教養教育系の大学が増えてくれば、両者の共存は可能で、棲み分けも可能だと思います。英語授業と海外留学が育てる真の国際人-----企業の人事部から注目度の高い国際教養大学、その特徴についてご紹介ください。 本学の教育の特徴は、「教養教育+英語教育+海外留学」です。世界の教育方針が教養教育へ変化した時期と軌を一にして始まり、教養教育重視へ方針をシフトする日本の高等教育の中で、先導的な役割を果たしています。 小さいながらも〝雑木林型〞であることを掲げ、「一人として同じ人間は育てない」という教育をしています。具体的には、基本的に3年生になったら一度全員を海外に送り出すという教育方法です。1・2年次は本学の教育ラインに乗せ、3年生になったら海外の大学のラインに、そして戻ったら本学のラインで仕上げるという〝ダブルアセンブリー(組み立て)方式〞です。ただし、この方式は、本学と世界の教育との整合性が取れていることが大前提です。 学生の海外留学には大学としても膨大な労力をかけて対応しています。留学させる前の準備、留学中のケア、帰国後のアフターケア。これは毎セメスター切れ目なく続いています。学生の留学は基本的に1校1名なので、その対応は大変です。だからと言って何でもおんぶにだっこというわけではなく、学生には主体的な行動を求めるようにしています。自分の海外留学で起こる様々なプロセスというのは、自分で経験していかなければならないと考えているからです。 国際教養大学を4年で卒業できる学生は半分程度です。その最大の理由は、海外留学1年間で最大30単位の取得を目指しているためです。国際教養大学の海外留学は語学の研修ではなく、海外で正規の授業を受けて、一定の単位の取得を目指します。それが4年間での卒業を難しくしています。しかし学生たちは焦っていません。長い目で見れば1年間長く勉強した方が自分のためになると分かっているからです。企業側にも、そうした事情や学生の行動に理解を示していただいています。教育は〝人工植林型〞から〝雑木林型〞へ外国人教員による授業の様子。国際教養大学では、専任教員の半数以上が外国人です。24

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