vol71
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知識や情報、日本の食文化や食糧、農業、環境問題などについて考える場を提供しています。また、「食育館」のテーブルには、献立にとり入れた「旬の食材」の栄養機能性やレシピなどを記した「卓上メモ」を設置して、「食育の環境づくり」を行っています。そして平成24年からは、地域の方々のために、「食」や「健康」、「食の安全性」に関するタイムリーな話題についての「食育講座」(食育館主催)を開催し、新しい知見や信頼できる情報を発信する場としての役割も担っています。学生が迷ってしまいがちな食生活 近年、食をめぐる様々な問題が生じている中で「食育基本法」(平成17年)が制定されました。「痩せていることがベストである」といった若い世代の極端な「やせ志向」、現実の体型と自己認識における体型との乖離現象(ギャップ)は、女性に大きい傾向が窺えます。すなわち、体型的に「ふつう」および「やせ」の類に属している者が「私は太っている」と誤った認識をしているのです。その結果、低カロリー嗜好に偏り、「○○だけ」「○○と○○だけ」といった食べ方で満足している人がいます。私どもは「ばっかり食べ」と表現していますが、「サラダだけ」「おにぎりとお茶だけ」「サンドイッチとコーヒーだけ」といった単品食の飲食スタイルの増加は、栄養摂取の偏重をきたします。 その点、「一汁三菜」の食事形式は、自ずと栄養のバランスがとれた健康食に繋がります。食事はあまりにも日常的な営みであるため、ついつい嗜好性を重んじ、栄養の偏りなどに無頓着になりがちです。このような事象を長期的に繰り返すことは、知らず知らずのうちに、肥満や糖尿病などのいわゆる生活習慣病や、栄養素摂取不足による鉄欠乏性貧血、骨粗鬆症予備軍の原因となることが懸念されます。若い世代の方々には自身の心身の健康について、「将来の私は、現在の私の延長線上にある」ということを認識してほしいと思います。健康寿命をのばそう! ところで、世界有数の長寿国であるわが国ですが、平均寿命(生まれてから死ぬまでの寿命の平均)と「健康寿命」(日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間)の差は男性で約9年、女性で約12年もあります。自立した生活を送れる期間を増やす「健康寿命の延伸」は大きな課題です。厚生労働省はそのための取り組みとして「運動」「禁煙」とともに「食生活」を掲げ、その重要性を啓蒙しています。 他方、「食」にはコミュニケーションツールとしての機能があります。家族や気の合った仲間と食を共にする機会は、食べる喜びや楽しみを通じて豊かな心を育むものです。学生が「食育館」を上手に活用することで、知らず知らずのうちに「良い食事」「良い食べ方」といった正しい食事のあり方を学び取り、将来社会に出ていくつになっても、自立した「食の自己管理」ができるような礎になることを願ってやみません。寺澤 洋子(てらざわ ようこ)1950年、佐賀県生まれ。筑波大学大学院生命環境科学研究科修了。博士(学術)。中村学園大学食物栄養学科助手、同学園女子高等学校・中学校教諭、同学園大学栄養科学部准教授を経て、2011年より現職。専門は栄養指導。8

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