IKUEI NEWS Vol.70
9/44

齊藤 泰治(さいとう たいじ)1982年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。同大学大学院文学研究科博士課程(前期)修了。早稲田大学政治経済学部専任講師、助教授を経て、1996年教授に就任。2004年より同大学政治経済学術院教授。2008年からは同大学大学院政治学研究科(ジャーナリズムコース)教授(兼任)。2014年11月より早稲田大学学生部長。専門は中国近現代思想史。です。課外活動などを通して自身の向上に努める学生は、結果的にそのような根源的な力を日々鍛えているのだと思います。 これまで、人間力のような曖昧な能力は評価の対象になっていませんでした。そこで早稲田大学では、今まで大学として把握しきれていなかった学生の正課外での活動を、試験やレポートなどの正課の部分と併せて表示することができる学修ポートフォリオシステムの作成に着手しています。一人の学生が卒業までの間に大学生活を通して何をしてきたかが見えるようになり、各種受賞歴や学内イベントへの参画経験などを含めた学生生活の全体像がひと目で明らかになるというものです。これは、テストの点数でしか学生を評価できないという、大学が抱えていた何十年来の課題を超えるための第一歩になり得ると考えています。強制ではなく、自分から機会を掴む 学内イベントの企画・運営に携わること、つまり、早稲田祭やICCの企画・運営に携わることにより、学生が成長を遂げていることは間違いありません。一方で、参加が即よい学びに繋がるという客観的なデータが存在するわけでもありません。学生部長という立場で挨拶をする際は、積極性や好奇心を持って何にでもチャレンジせよと学生に言いますが、その際のポイントは、「気づき」にあると考えています。 立場上、奨学金を受給している学生の活動報告を読むことがあります。彼ら彼女らは、奨学金をもらっている恩を自身の成長で返そうと学業に邁進し、さまざまな課外活動に参加しています。これは、奨学金をもらっている学生が、大学が奨学金を給付する意図に気づいて行動しているわけです。 つまり、学生一人ひとりが、大学生として求められる能力を考え、自分に足りない部分を補おうと試みる。誰かに強制されるのではなく、自覚のうえで成長の機会を掴むことが重要なのです。 昨今はさまざまな大学で、学生の参画が大きなテーマになっています。したがって、学生の学内イベントを通じた成長の機会は、以前に比べて格段に増えています。また、かつての放任主義の反動から、学生の面倒を見る方向に大学がシフトしてきています。例えば本学でも、新入生ガイダンスでキャリアセンターから、1・2年次にさまざまなサークル・課外活動に参加し、人と交流する中で自分を高めるようアドバイスしたり、社会連携教育部門とキャリアセンターが協力して「IPPO(いっぽ)プログラム」という学生の主体性を引きだすワークショップを行ったりしています。 ただ、間違えてはいけないのは、あくまでも学生の自主性が成長への推進力だということ。数多くの機会から学生が自分に必要なものを探しだし、食らいついて何とか成長してやろうという決意が必要なのです。IPPOプログラム:学生の主体性を高め、学内・外の社会連携教育プログラムへの参加を促すワークショップ。学生同士で話し合うfumidasu(ふみだす)ワークショップと、地域や企業の人と交流するtsunagaru(つながる)プログラムからなる。6

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です