IKUEI NEWS_69
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導入していることで知られるが、「読む・書く・発表する・批評する・討議する」の5つを中心に授業を組み立てているという。受講者の一人、デヴィッド・ウィンガンド(20才)は、「内気だったが、今では自発的に自分の作品を読み上げることができるようになった。それもこの学習法のメリットだろう」と言う。同じクラスを取っている4年生のケイトリン・デイビス(22才)は、「最近、クラスメイト数人と“ONE UNIVERSITY PLACE”という学園誌を発行した。ジャーナリストになるための訓練です」と授業が自分に与えた効果について語る。また、「教授と一対一で話したり、学友と1分間に何本単文が書けるかを競争したりもした。これまでは寮で一人で読書や勉強をする方が好きだったが、今はクラスに出席することが楽しい」と、意識の転換をもたらしたことも教えてくれた。ラーニング(経験を土台とした学習)の現代版であり、ピースコープ(平和部隊/アメリカ政府が運営する開発途上国支援プロジェクト)やボランティア活動、インターンシップなどもこれに含まれる。米国の高等教育界に昔から存在していた学習法の一つ」と言う。とはいえ、ここ数年の間に米国の高等教育界でアクティブラーニングが一種のブームになっていることを博士は認め、その理由を「効果が分かってきたらからだろう」と分析する。事実、2014年現在、この学習法を導入していない大学は、大小に関わらず、そして実際に活用されているかどうかは別として、ほとんどないと言っても間違いないだろう。 アクティブラーニングがブームになっている理由の一つは、ロサンスキー博士が言うように、その効果がさまざまなリサーチで確認されるようになったからだ。ハーバード大学が行なった調査によると、アクティブラーニングで勉強した学生の知識習得率は、そうでない学生の3倍になるという。知識の保有率(記憶の長さ)も高く、生涯知識になる可能性もある。また、もう一つのメリットは、性差を取り除くことだ。講義を中心とした学習法では、平均的に言って、女性と男性の知識習得率にギャップがあった。だが、発言とディスカッションを主とするアクティブラーニングでは、男女の差が消えるばかりか、テーマによっては女性の方がより多くを習得することもあるという。 最初にこの学習法の効果を科学的に証明したマズール教授のエネルギッシュで情熱的な啓蒙運動もまた、効を奏しているようだ。教授は2013年だけでも、アクティブラーニングに関するスピーチを百回以上行なっている。スピーチの中で、「教授の仕事は『教える』ことから、学生が学ぶための『手助けをする』ことに変わっている」と口癖のように言うそうである。教授の「ピア・インストラクション」(著書)、「オルタナティブ・ラーニング」(DVD)は、アクティブラーニングのテキストとして活用されている。 米国でアクティブラーニングが台頭しているもう一つの理由は、新世代の大学生のニーズによるものでもある。今の大学生を代表するミレニアル世代(17才から34才までの団塊)は、いわゆるデジタル・ネイティブと呼ばれるグループで、生まれた時からインターネット、ビデオゲーム、モバイル、フェイスブックやツイッターのようなソーシャルメディア、オンラインビデオなどに接して育ってきた世代だ。彼らにとって、伝統的な教授法は退屈なもので、違和感さえ持っている。教授が一方的に伝える情報にはあまり関心がなく、自分が積極的に参加できる学習法の方が、彼らのライフスタイルや嗜好にあっている。MOOC(オンラインコース)が彼らの間で容易に受け入れられているのはそのためだ。 例えば、コネチカット州立大学(以下UConnと略)で心理学を専攻しているリー・アクアン(21才)は、「寮でルームメイトと一緒に教授のオンラインビデオを見てディスカッションし、翌日の授業で分からない点を聞く。これはとても効率的なやり方だ」と、アクティブラーニングを素直に受け入れている。UConnの文学部教授セルカン・ゴーケムリ博士は、自分のクラスに積極的にアクティブラーニングをニューヘイブン大学経済学部長、リン・ロサンスキー。アクティブラーニングは米国の高等教育には昔から存在していたと言う。「ピースコープ、ボランティア活動、インターンシップなどはみなアクティブラーニングの一種だ」。コネチカット州立大学文学部の英語教員、セルカン・ゴーケムリ。アクティブラーニングを導入しにくい科目の一つと言われる文学部にこのシステムを導入して成功している。学生たちが自主的に文章を書いたり、ディスカッションしたり、批評したりすることを奨励している。コネチカット州立大学文学部の学生、ケイトリン・デイビス。ジャーナリスト志望。最近、“ONE UNIVERSITY PLACE”という学生雑誌を発行した。ジャーナリストになるための訓練の一つだという。コネチカット州立大学文学部の学生、デヴィッド・ウィンガンド。将来はPR関係のライターか、非営利団体のPR部で働きたいという。「ゴーケムリ教授がクラスに導入しているアクティブラーニングには大きなメリットがある」。コネチカット州立大学で心理学を勉強している、リー・アクアン(写真中央)。アクティブラーニングは「非常に効率のいい勉強法だ」という。「クラスよりクラス外で友人たちとディスカッションしながら学ぶのが楽しいし、効果的」。29

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