IKUEI NEWS_69
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いない」、「教科書に載っていない」などと不満を述べたり、反発したりする。どうすれば物理が机上論でなく、実際の問題に適応できる学問であることが分かるのか。途方にくれた教授は、ある日、教鞭生活の中で一度も行なったことのないあるリクエストを学生たちに出した。「この問題について、自分たちで話し合ってみなさい」。ホールを埋めた150人の学生たちが、蜂の巣をつついたようにざわめきたった。しかし、3分もしないうちに正しい答えを見つけて、それを発表するグループがあった。驚くべきスピードだった。自分の一時間の講義は、いったい何だったのか。「学生の一人が正しい答えを出す。そして間違った答えを出している他の学生を説得するためにディスカッションをする。仲間が出した正解には、誰もが容易に納得する。そして、こうして出された答えは、そのディスカッションに参加した学生たちの頭に、教授の講義や教科書よりも強く残り、自分の知識となる」。マズール教授は、フォローアップ・リサーチを繰り返した結果、この事実を知った。ここから、「ピア・インストラクション」(仲間から教わること)、「インタラクティブ・学生主体の学習法の萌芽 ハーバード大学の物理学教授エリック・マズールは、巧みな雄弁さと、整理され、充実した講義内容とで、多くの学生たちから尊敬と敬意を集める看板教授である。しかし1990年、全米の物理学専攻の学生の大部分が、最も基本的なコンセプトについて、現実世界に応用して考えることができないというテスト結果を知り、彼は愕然とした。自分のクラスの学生たちを対象に同じ種類のテストを行なったが、結果は同じであった。学生たちは授業や教科書で習得した方程式や定則に関してはよく記憶していたが、それらを実際の生活の中の問題に適合させることに関しては、全く無知に等しかった。このテスト結果を見て、自分が優れた教授だという自信は「幻想でしかなかった」と、マズール教授はハーバードビジネスレビュー誌で告白している。 マズール教授が投げかける実生活に関わる問題に当惑すると、学生たちの多くが「そんなことは教えてもらってラーニング」、「コーポラティブ・ラーニング」などと呼ばれる教授法が誕生した。後に、これらさまざまな呼称がまとめられ、今では「アクティブラーニング」という呼称に定着している。アクティブラーニングの台頭 アクティブラーニングの定義はそれを導入している大学によって少しずつ違うが、基本的には知識を学ぶ、あるいは身につける責任が、与える側ではなく学ぶ側にあるという考え方だ。これまでのように、学生は教授や講師が与える情報をただノートに写し取ったり、傾聴したりするだけでなく、積極的にそのテーマについて予習やリサーチをし、それに関する文章を書いたり、友人とディスカッションしたりすることで、実体的、体験的に学問を身につけることができる。この方法を積極的に取り入れているニューヘイブン大学経済学部の学部長リン・ロサンスキー博士は、「アクティブラーニングは80年代に流行ったエクスペリエンシャル・楓 セビル米国の高等教育に台頭する学生主体の学習法・アクティブラーニングアメリカン・キャンパス・ライフ 「講義」は死にかけているか?28

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