IKUEI NEWS vol59
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28れていました。1960年代に、化学染料の導入により生産が一時ストップしたものの、90年代半ば以降に日本やその他の外国から支援が入り、生産が復活。青年海外協力隊からは染色の指導員を派遣し、現地の人々が藍染めの技術を身につけ、収入につなげられるよう指導・支援を行っています。 田上さんは、現地でホームステイをしながら、首都サンサルバドルを拠点に国内の様様な地域を回り、女性や子どもを対象に染色の技術を教えました。「生徒のほとんどが未経験者でしたが、器用な方はちょっと教えるとめきめき上達しますし、偶然、面白い作品ができたりするのも楽しみでした。一番幸せだったのは、生徒たちの作品ができあがる瞬間です。心から『ありがとう』と喜んでもらえることが本当に嬉しかった」。最後はスペイン語で染色マニュアルを作成して、生徒に配布して帰国しました。 シングルマザーの割合が高いエルサルバドルでは、多くの女性が仕事を必要としており、指導員から習得した染色技術を活かして、仕事につなげている人が大勢いるといいます。田上さんは、そうした現地の貧困問題をじかに見たことで、帰国した今もエルサルバドルの女性支援に何らかの形で関わっていきたいと思うようになったと話します。思い通りにならないから次がある 今後は桜島での指導や販売を中心にしつつ、様々な個性を持った生徒と関わりながら得た気づきや刺激を、自身の創作にも活かしていきたいと語る田上さん。どのような作品を目指して、日々制作に励んでいるのでしょうか。 「人によって、良い染物や織物の好みは違うと思うのですが、自分の作品を手に取った時に『これはいい』と思えるかどうかの感覚を大事にしたいと思っています。まだそういう瞬間には、なかなか出会えないのですが、だからこそ『もうちょっと続けてみよう』とまた頑張れるのだと思います」。 最後に、学生の皆さんへのメッセージをいただきました。 「私は青年海外協力隊に参加して、異文化で生活することで多くの刺激を受け、日本の素晴らしさを改めて感じました。学生の皆さんにも、もしチャンスがあれば、一度新しい環境に身を置き、違う角度から別の自分を見つめ直す経験をしてほしいと思います」。田上さん自作の染色マニュアルを持つ生徒たちと。中央が本人。手に持っているのはすべて田上さんが染め、織った作品。

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