IKUEI NEWS vol59
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27染織と向き合い続ける日々 世界有数の活火山として知られる鹿児島県の桜島。フェリーの発着港である桜島港から、バスで10分ほどの静かな海沿いの通りに、染織家・田上真弓さんの自宅兼工房があります。工房の中には大きな機織り機が置かれ、田上さんが自ら染め、織った色とりどりの作品や、染めの原料となる藍やアカネの入ったビーカーが整然と並べられています。 「染織家」は「染め」と「織り」の両方を手作業で行います。最初に草木を煮出した染液で糸を染め、その糸を使って布を織りますが、数百本の経糸を一本ずつ織り機にかけるなど、いくつもの準備工程があり、織り上がるまでに大変な手間を要する作業です。 「草木染めは化学染料と違って、なかなか自分の思った通りの色には染まりませんが、自然の優しい色が楽しめます」とその魅力を語る田上さん。金沢美術工芸大学在学中に染織に出会って以来、ずっと染織の仕事に関わり続けてきました。2006年に大学院を修了後、石川県で市民向けの染色講座の指導補佐、福岡県の伝統工芸・久留米絣の工房を経て独立。2010年に家族が住む桜島に戻り、現在の工房を設立しました。その半年後には、高校時代からの憧れだったという青年海外協力隊に志願し、エルサルバドルに染色の指導員としての派遣が決定。今年3月に、2年間の任務を終えて帰国したばかりです。 「エルサルバドルのゆったりしたペースにすっかり慣れてしまっていたので、帰国直後は時間通りにバスや電車が来ることや、コンビニの照明の明るさに戸惑いました。最近になってようやく日本の感覚を取り戻してきたところです」 そう笑いながらも、今後は桜島を拠点に、自宅の工房で染物教室の開講や、商品の制作・販売を予定しており、その準備に忙しい毎日を送っています。「教室では草木染めや藍染めをやりたいと思っています。この近辺や市内にも、染めをやってみたいと言う方がけっこういらっしゃるんですよ」。 指導の楽しさを知った青年海外協力隊 田上さんは、帰国後に教室を開こうと思った理由について、「エルサルバドルでの指導経験が本当に楽しかったから」と話します。エルサルバドルでは、かつて藍の生産が盛んに行わ染織家田上 真弓さん(電通育英会38期生)鹿児島の桜島に工房を構える染織家・田上真弓さん。学生時代からずっと染織に関わり続けてきました。今後は桜島を拠点に、指導者としても活動のフィールドを広げたいと、その意欲を語ります。人との関わりの中で自分自身の染織を追求したいエルサルバドルでの指導風景。はたお

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