IKUEI NEWS vol58
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昭和女子大学 特任教授/コミュニティ・サービス・ラーニングセンターセンター長 興梠 寛アレック・ディクソンとの出会い 私が本格的にボランティアに関わるようになったのは、師であるアレック・ディクソンとの出会いが大きなきっかけでした。私は24歳の時に仲間と小さな国際協力ボランティアの組織を作って活動していたのですが、当時たまたま出席したウィーンでの国連会議の講演者が、イギリスの「ボランティアの父」と呼ばれるアレック・ディクソンだったのです。 彼は、イギリスに世界初の海外ボランティア派遣機関であるボランティア・サービス・オーバーシーズ(VSO)を、次いでイギリス国内向けのボランティア活動組織であるコミュニティ・サービス・ボランティアーズ(CSV)を設立し、50年代初頭からサービス・ラーニングや市民教育の提言をしていた人です。私はその思想に大きな感銘を受け、渡英して彼のもとで学ぶ決心をしました。以来、日本の教育にボランティア活動をどう取り入れていくかの研究を重ね、各界に呼びかけてきました。今、私がやっていることはすべてアレック・ディクソンから教わったことです。未だに彼を超えることはできないですね。ボランティア活動の教育力を活かす「サービス・ラーニング」 特に大学教育への導入を推奨してきたサービス・ラーニングは、正式にはコミュニティ・サービス・ラーニング(CSL)といって、単にボランティアとして活動するのではなく、大学のカリキュラムに組み込むことで、ボランティア活動の持つ教育力をアカデミズムへの学びに活かそうとする教科教授法です。 具体的には、大学の授業で専門教科を学んだ成果を活用しながら、実習先でボランティアによる社会貢献活動を行います。例えば英語学科なら国際交流センター、都市デザイン学科なら街づくりのNPOなどを実習先に選びます。 現場での課題解決型学習を通じて専門分野への関心がさらに高まり、実習先に貢献できるように自発的に学ぶようになるので、コミュニケーション力や学ぶ力が飛躍的に向上します。自分の専門を活かして社会貢献できる点で、学生と実習先の双方にメリットをもたらす、非常にバランスの取れた教育法です。“I need you” の一言が人を前進させる ボランティア活動は強制ではありませんから、やるのもやらないのも本人の自由です。しかし、活動の中で他者や社会から“I need you”と言われることで、学生は大きく成長します。 人は他者からかけがえのない存在として認められることで、自分の存在意義を見出すものですが、今の若者たちは、競争・管理・市場経済社会の中でいつも急がされていて、自分がなぜ生まれて、何のために生きているのか、立ち止まって考える時間もありません。自分の足元に確信が持てずに、無力感や自己喪失感を抱く多くの若者たちが「他者に必要とされる」経験をすることはとても重要です。そうして自己有用感を得ることができれば、学問や将来のキャリア形成に向き合う姿勢も変わりますし、4年間で別人のように成長することもあります。「私」の行動が社会を変えていく ボランティアといっても、堅苦しく考える必要はありません。私はいつも、「自然に普段着のままできることを自分らしくやっていくこと」を学生に提案しています。一番大事なのは、些細なことでも自分から他人のために行動する意識を持つ、ボランタリーな生活をすることです。例えば、花を買ってきて窓辺に飾るだけでも、それを見た通行人の心が和みますし、自分から挨拶をして、気持ち良い言葉をプレゼントするのも大切なボランタリーライフです。 学生がボランティア活動をする動機のトップ3は「人との出会い」「心から感動できる体験がしたい」「自分のやりたいことを見つけたい」という自己実現のための動機です。「社会や人のために」という社会実現のための動機はその次です。私はそれでも良いと思っています。自分がハッピーになれなければ、ボランティアなんて続きませんし、相手をハッピーにすることもできません。 ボランティアとは「自分が変わる、社会が変わる」ことです。「私」が変わらなければ社会は変わりません。できることから自分の生き方を変えていけば良いのです。これからの大学は、学生たちにどんどんそういったチャンスを提供していくべきですし、社会全体が、学生の成長を全面的に応援する仕組みを作っていくべきだと思っています。38ボランタリーな生活から社会を変えるボランタリーな生活から社会を変える恩師であるアレック・ディクソン&モラ夫妻とともに(本人中央)こうろき ひろし

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