IKUEI NEWS vol58
32/52

29早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター 助教    兵藤智佳 昨年8月、私たちCommunity AIDS Projectは福島県立双葉高校の生徒への学習支援を行いました。 本プロジェクトには、震災以前から国内外のHIV陽性者や戦争被害女性への支援を継続的に行い、そこにある差別や偏見の問題と向き合ってきた経緯があります。その視点から、今回の復興支援活動の拠点は最初から福島と決めていました。というのも福島の人々は原発事故の被害者でありながら、被曝者として社会からの差別に直面している人々でもあるからです。そして、そういった差別や偏見への恐怖ゆえに抑圧される当事者の声に耳を傾け、社会へ伝えていくことこそ、私たちのプロジェクトがこれまでやってきたことだったのです。 支援の対象となった福島県立双葉高校は、福島第一原発から3.5キロの場所に位置し、生徒は親戚の家やアパートで避難生活を送りながら、今も福島県内の4つの学校に分かれて勉強を続けています。 「苦しい環境の中でも高校生に勉強への気持ちを高めてもらいたい」 そんな思いでボランティアの学生たちは必死に授業の練習を重ね、少しでも福島の高校生の気持ちに寄り添えるよう、事前に日本の原発政策と福島県双葉地区の歴史について十分な理解を深めました。 そして迎えた8月、栃木県内の宿舎で6名の学生と11名の高校生が共同生活をしながら、一週間の勉強合宿を開始しました。日中は白鴎大学の教室を借りて授業を行い、宿舎に戻ってからも夜中まで勉強を続けました。時々花火やフットサルで息抜きをしながら一日10時間以上勉強する濃密な時間の中で、高校生は勉強への意識を高めていったのです。 高校生たちは学生との距離が縮まるにつれて、早稲田大学「福島からの手紙」福島県立双葉高校学習支援ボランティアの一週間 教職員からの報告親にも先生にも言えなかった気持ちを学生に少しずつ伝えるようになりました。最終日には、一人一人が震災以来抱えていた想いを語ってくれました。 「東京の人なんて私たちのことをちっとも考えていないと思っていた」 「放射能で私たちは汚いと思われている」 被害者であるにもかかわらず、社会からの差別に苦しむ彼らの姿に、学生の感情も大きく揺れ動きました。私はそんな学生の気持ちを整理するために繰り返しミーティングを行い、彼らが自分自身の感情に言葉を与え、そこに意味を見出していく作業をサポートしました。それでも溢れる感情をコントロールできなくなってしまった学生には私が個別で対応したり、活動自体を休ませることもありました。 今回の活動は高校生への学習支援であると同時に、彼らへの差別を生みだした社会の一員として、「起きていることは福島の問題ではなく私たちの問題だ」と感じる機会でもありました。そのことに学生がどう向き合い、社会にどう働きかけていくかを模索す日中は白鴎大学の教室を借り、午前と午後の6時間授業を行った社会とつながる学生ボランティア各大学の事例紹介科目担当制授業のアイデアは学生によるもの

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です