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先輩の留学報告

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平成17年度生
私立早稲田大学国際教養学部3年  冨澤 紀子

留学の目的

環境学を勉強し、多角的な視点を身につけること。

期間

平成17年10月~平成18年7月

留学校

アデレード大学(オーストラリア)

学部

人文社会科学部環境地理学科

留学の目標

私は2005年10月から2006年7月までの約10ヶ月間、オーストラリアのアデレード大学に留学しました。この留学の目標は大きく2つに分けられます。第一の目標は日本で私が通っている大学の学部ではできない環境学を勉強することです。オーストラリアでは環境学の研究が盛んであり、また日本とは自然環境や資源の有無など様々な条件が違うので、日本で学ぶのとは異なった観点で勉強することができます。第二の目標は、多文化主義の国であるオーストラリアで、我々日本人とは違った価値観やバックグラウンドを持つ多くの人々との交流を通して、自分の視点を向上させ物事を多角的に捉えられるようにすることです。

経過

留学の前半、10月の頭から1月の終わりまでアデレード大学の機関の“Pre-English Enrolment Program” 通称PEPというコースで学習しました。週に5日間通い、オーストラリアの大学で成功するために必要なアカデミックスキルを学ぶコースです。これは主にアジアからの留学生からなる少人数制のクラスで、経験豊かな講師陣が揃っていました。ここでは定期的に多くの課題をこなせばならず、忙しい日々を送りましたが、PEPで学んだことは全て、その後に続いた学部での授業で大変役に立ちました。

主な課題はエッセイ、プレゼンテーション、グループプロジェクト、クリティカルリビュー、そしてコース卒業に必要な個人研究の論文、IRP(Individual Research Paper)です。この中で特に力を入れたのはエッセイとIRPです。
エッセイは大学で最も基礎的な課題の一つですので特に重点的にやりました。その基本はIntroduction, body, conclusion(導入、主要部、結論)の三部構成です。エッセイを書くとき闇雲に書き始めてはならず、まずブレインストームをして、トピックに対する自分の考えを思いつく限り紙に書き並べます。アイデアが不十分な時は図書館やインターネットを利用して簡単なリサーチをします。これらのアイデアを組み立てて、エッセイの設計図であるアウトラインを作ります。ここで論理に矛盾はないか、自分の主張したいことをサポートするのにどんな証拠やデータが必要なのか等を確認してさらに深くリサーチをします。その方法も重要です。膨大な量のリソース、論文や学術誌、雑誌、新聞などの中からトピックに沿った特定の情報を探し出すには、図書館を有効活用し、収集した資料を効率的に利用するために、スキミングが必要となります。スキミングとは文章を逐一細かに理解して読むのではなく、全体の流れや重要なポイントだけを断片的に読む方法です。集めた統計データや学術証拠をもとに初稿を仕上げ、文法の正誤のほか、読み手に合った表現になっているかなどをチェックします。クラスメイトに頼んでプルーフリーディングをしてもらうのも効果的でした。第三者の客観的な意見はよいエッセイを書くのにとても役にたちました。こうしてエッセイひとつをとっても実に多くのことを学びました。
そしてもう一つの大きな課題はコースの卒業に必要なIRP(自分の専攻する分野からトピックを選んで書く最後の研究論文)です。私は環境学から、「石油枯渇後の代替エネルギーとしての原子力発電の是非」をテーマにしました。オーストラリアでは石油が使い尽くされた後、核エネルギーに頼っていこうという意見が強く出ていたからです。
オーストラリアには世界最大のウラン鉱山があり、その豊富な資源を見逃す手は無いというビジネス界や、CO2排出量を抑えたい一部の環境専門家らが新聞などのメディアを通じて原子力発電利用推進のキャンペーンを行っていました。現在、オーストラリアには研究用の炉が一つシドニーにあるだけで原子力発電は行われていません。しかし石油の代替エネルギーへの需要は経済発展と人口増加のために高くなっています。その代表的な存在の原子力は化石燃料と比べるとCO2の排出量が少なく、風力、太陽光といったリニューアブルエネルギーと違って安定した電力供給を行うことができ、コストも安いことは確かですが、原子力発電を行った後の核廃棄物の処理問題は未解決のままです。最も現実的な処理方法は地下シェルターを作り、その中で廃棄物を保管する方法ですが、地震や地下水によってシェルターが損傷する危険性があります。地盤についての研究は完全ではなく、未だ時間がかかるようです。廃棄物処理が不完全である以上原子力発電にはやはり大きな欠点があり、石油の代替エネルギーにはなり得ません。

留学の後半、2月から6月まではアデレード大学の人文社会科学部の授業を受講しました。登録したのは“Urban Biodiversity Management”, “Urban Futures: Environmental and Social Issues”, “Sustaining a Fragile Planet”の3つです。
"Urban Biodiversity Management"はその中心科目で、最も力を入れました。都市とその周辺における野生動物とその生息地の管理がテーマで、アデレードの中心部と郊外が対象でした。オーストラリアの大学では講義形式のクラスと少人数のチュートリアルのクラスがセットになっており、3時間のチュートリアルがあったこの科目ではよく課外授業で、大学の近くにある植物園や郊外の自然保護公園に行き、現地でどのように生物多様性が守られ、どのようなことが問題なのかを実体験を通して学ぶことができました。週に1コマ90分の日本の大学では難しいことです。
週末に一日かけたフィールドトリップでは、自然公園で地域の湿地プロジェクトを見学し、その利点や実際の問題点を学びました。湿地は動植物にとって貴重な生息地となり、豊かな生物多様性を支えます。アデレードの北にあるサリズベリーには総面積250ヘクタールの36の湿地があり、その進んだマネジメント手法は世界的に有名です。人間の手によって改善・管理されているこれらの湿地では地域的に絶滅したと思われていた種が発見されたほどで、全体で25種の植物と160種の鳥、8種の魚、4種の蛙、ザリガニと亀が1種ずつに、多数の無脊椎動物、と多数の種を支えています。さらに降雨の際に流れ込む汚水や生活・工業排水を湿地の自然浄化作用できれいにし、地下の帯水層に冬の間保存し、夏にポンプで汲み上げて再利用することに成功しています。このプロジェクトは画期的で、汚染された水による生態系の破壊を防ぐだけではなく、地下の帯水層を利用することで低コストで大量の水を備蓄することができます。

結果

このようにアデレード大学での留学で、日本にいては得ることのできなかった、貴重なことを勉強することができました。日本の大学でも重要な、エッセイなどのアカデミックスキルをPEPで学び、そして人文社会科学部では環境学を勉強しました。このような貴重な機会を与えて下さった電通育英会の皆様に心から感謝をし、これからもさらに学業に励み、大学卒業後は社会に還元していきたいと思います。