
韓国家族法の理解
韓国法による韓国社会の理解
平成17年8月~平成18年8月
韓南大学(大韓民国)
法学部法学科
私は、韓国の大田にある韓南大学に留学しました。大田はソウルとプサンのちょうど中間辺りに位置し、近年では科学都市として注目されています。大田にあるこの大学には、家族法や国際法を代表としすばらしい先生方がたくさんいらっしゃいます。特に家族法の先生は、以前に私の母校である、熊本大学に短期でいらっしゃって講義をしてくださいました。そのような関係もあり、私は韓南大学に行き韓国の家族法の勉強をしてみたいと思うようになりました。そして実際、韓国では家族法の授業を中心に勉強して行きました。
日本と韓国の民法の体系は、韓国の民法が日本の民法を習い作られたことから、似ている部分が多いと言えます。しかし、家族法については、昔からの結婚制度や風習などが多く表れているため、日本と韓国では異なるところも多く見られます。これは比較法を勉強するうえで重要なことであり、家族法から韓国の文化を知ることもできるといえます。例を挙げると、日本の家族法の規定の中に、夫婦同姓の制度があります(民法750条)。これは、結婚してから夫婦は夫または妻の姓を用いるというものです。これは夫、妻のどちらの姓を用いてもいいのですが、実際は多くの夫婦が夫の姓を用いていることから、男女差別を助長するなどとの意見があり、夫婦別姓の制度を設けようとの動きに変わってきています。韓国ではどうかというと、韓国では夫婦は結婚しても結婚前の自分の姓を用います。しかし、これは単に男女平等の尊重から設けられた規定ではありません。韓国では子供が生まれると子供は父方の姓を用います。ですから結婚した後も父方の姓が優先されるというわけです。これは儒教の考えを強く表していると思います。私は韓国で過ごし、このように儒教の考えを実感する機会が多くありました。例えば、バスに乗っている時、高齢の方が乗って来られたら、座っていた若者は皆、席を譲ろうとします。また、アメリカなどでは子供のしつけの際に親であろうと叩くことは良くないと言われていると思いますが、韓国では親が絶対的な存在であるために、親の言うことを聞かない子は叩いてもいいということになります。
しかし、韓国ではこのように儒教の考えを強く守ろうとする人々に対し、西洋文化を受け入れようとする、キリスト教も多くの指示を集めています。韓国に行けば、至るところに協会がありますし、道を歩くだけでキリスト教への勧誘を受けることが多くあります。このようなキリスト教徒の人たちが従来の習慣を守ろうとする人々と対立することもあるようです。例えば、韓国には日本のお盆のようなものに、チュソクというものがあります。この時は、男性は皆祖先に礼をする儀式が行わなければなりません。しかし、キリスト教徒の人々は礼をするのは、キリストに対してのみと考えるために行いません。これが良いことなのか、悪いことなのかは分かりませんが、このような新たな流れに乗り、韓国では新たな変化が生じてきていると思います。例えば、韓国の家族法の中に同姓同本不婚という制度があります(韓国民法809条)。これは、同じ姓であり、その家系の始祖の出身地である本貫が同じである時は、法律的に結婚を禁止するというものです。ですから、韓国では金さんが一番多いですが、金さんにとって同じ金さんでも、結婚できる金さんと結婚できない金さんがいるわけです。これは古くから韓国社会に存在していた法でしたが、今では憲法裁判所で無効とされたため意味を持たなくなっています。これは、個人の自由を認めるということより、良い変化の例だといえますが、この他、韓国で問題となっていることに少子化、離婚率の上昇などがあります。これらは古くからの男尊女卑的な考えが変化し、女性の社会進出が活発になる過程で必ず生じてくる問題であり、韓国政府は保育施設の充実や、教育費の支援などによる対策を進めています。また、日本でもそうですが、韓国では子供の教育費が多くかかることも少子化と関係があるようです。私が特に感じたことは、韓国人はよく海外に語学留学に行きます。とくに英語圏に行く人が多いようですが、これは韓国の小さい領土の中では経済発展が見込まれないため、海外に目を向けている人が多いようです。韓国の就職率もあまりよくないので、韓国政府は経済の急激な発展と共に生じてきたこれらの問題に手を拱いているところだといえます。経済の発展に伴い日本も同じような問題を持っています。韓国と日本は、アメリカや経済発展を進める中国などに対抗するためにも、協力して問題の解決、経済の回復などに努めていくべくではないでしょうか。
このように私は、韓国の法を基にして韓国の社会に対し深く理解できたと思います。また、生活面でも、私は学校の寮で韓国人の学生と4人部屋で過ごしていたため、現に韓国の若者がどのような考えを持っているのかを感じることができました。特に韓国の若者の中で日本の存在は大きいようです。日本の歌やドラマが好きという人もいましたし、また日本の政治に反対だという人もいました。このように韓国の人々が多く日本に関心を抱いてくれることは、お互いにもっと理解しあえる機会を増やすことだと思います。昔は近くて遠い国だと言われていましたが、私は実際に韓国に行って、本当に近い国だなということを感じました。このような貴重な機会を持てたことをうれしく思います。